相続した「いらない土地」、国に返せる? 相続土地国庫帰属制度を知っていますか

「親から土地を相続したけれど、使う予定がない」「遠方にある土地なので、草刈りや管理に行くのが大変」「田んぼを相続したけれど、自分は農業をしない」「売ろうとしても買い手が見つからない」。相続では、預貯金や自宅などの「引き継ぎたい財産」だけを相続するとは限りません。山林、農地、原野、遠方の宅地など、自分では利用する予定のない土地を相続することもあります。土地を所有している限り、管理の問題は続きます。そこで選択肢の一つになるのが、「相続土地国庫帰属制度」です。

一定の条件を満たせば、相続した土地を国に引き渡せます

相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって土地を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、その土地の所有権を国庫へ帰属させることができる制度です。

2023年4月27日に始まりました。

ただし、「この土地はいらないので国に返します」と一方的に手放せる制度ではありません。法務局へ申請し、土地の状態や権利関係などについて審査を受け、国が引き取ることのできる土地だと承認される必要があります。

実際に2,800件以上の土地が国へ引き渡されています

法務省が2026年7月16日に公表した速報値によると、2026年6月30日までの累計は、申請5,698件、国庫帰属2,885件、却下83件、取下げ1,063件となっています。

国庫へ帰属した2,885件の内訳は、宅地1,073件、農用地925件、森林193件、その他694件です。

制度として存在するだけではなく、実際に全国で利用されています。

どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではありません

国が土地を引き取れば、その後は国が管理することになります。そのため、通常の管理や処分に過大な費用や労力が必要になる土地などについては、国庫帰属が認められません。

例えば、「建物が建っている」「抵当権などが設定されている」「境界が明らかでない」「他人が通路として利用している」「一定の土壌汚染がある」「管理に大きな費用がかかる崖がある」といった土地は問題になる可能性があります。

田んぼの場合は「用水の負担金」にも注意が必要です

農地を相続した方には、もう一つ注意していただきたいことがあります。

田んぼでは、土地改良区などから用水費、賦課金、土地改良事業に伴う負担金などが発生していることがあります。

こうした金銭負担があるからといって、直ちにすべての田が国庫帰属できないというわけではありません。

しかし法務省は、国庫帰属後に、国が通常の土地管理費とは別の金銭債務を法令に基づいて負担することが確実な土地については、承認できないとしています。

具体例として、土地改良事業の区域内にあり、土地所有者に対して土地改良法に基づく金銭の賦課が近い将来行われることが確実な土地が挙げられています。

実際に、2026年6月末までの統計でも、「国庫帰属後、国が管理費以外の金銭債務を法令に基づき負担する土地」に該当したものが確認されています。

田を相続したときは確認を 「毎年どのような用水費や賦課金を支払っているのか」「土地改良区との関係はどうなっているのか」まで確認しておくことが重要です。

面積が大きな土地では負担金も大きくなることがあります

もう一つ注意したいのが、国へ納める負担金です。

申請時には、まず一筆につき14,000円の審査手数料が必要です。

さらに国庫帰属が承認されると、原則として10年分の土地管理費相当額として負担金を納付します。

よく、「20万円払えば国に土地を引き取ってもらえる」と説明されることがありますが、必ず20万円というわけではありません。

一般的な土地では面積にかかわらず20万円となる場合がありますが、一定の土地については面積に応じて負担金が算定されます。

法務省が示している例では、市街化区域等の宅地は100㎡で約55万円、200㎡で約80万円、農用地区域等の田・畑は500㎡で約72万円、1,000㎡で約110万円、森林は1,500㎡で約27万円、3,000㎡で約30万円とされています。

つまり、土地の種類によっては、面積が大きくなるほど負担金の総額も大きくなります。ただし単純な面積比例ではなく、面積が大きくなるにつれて1㎡当たりの負担額は低くなる計算方法です。

特に広い田畑については、「20万円くらいなら国に返そう」と考えていたところ、実際に計算すると負担金が100万円を超えることもあり得ます。

申請した後に別の引き取り手が見つかることもあります

2026年6月末までに取り下げられた1,063件のうち、562件は「有効活用の見込みが生じた」ことが理由です。

例えば、「隣の土地の所有者が引き取ってくれることになった」「自治体や国の機関で利用されることになった」「農地として活用される見込みができた」といったケースがあります。

ですから、土地を手放したい場合には、最初から国庫帰属だけに絞らず、売却、隣接地所有者への譲渡、農地としての活用なども含めて検討することが大切です。

相続放棄とは違います

「いらない土地なら相続放棄をすればいいのでは?」と思われるかもしれません。

しかし相続放棄は、原則として「この土地だけいらない」という手続ではありません。預貯金などを含め、その相続についての権利義務を一括して放棄することになります。

一方、相続土地国庫帰属制度は、相続した財産の中から一定の要件を満たした土地を国庫へ帰属させるための制度です。両者はまったく異なります。

「いらない土地だから国へ返せばいい」と考える前に

相続土地国庫帰属制度は、使わない土地を相続した方にとって非常に有用な制度です。

一方で、土地の面積が大きければ負担金が高額になる場合がある、田では土地改良区の賦課金などが問題になる場合がある、境界や建物、権利関係などによっては国が引き取れない、という点も知っておく必要があります。

特に田や山林については、登記簿だけを見ても判断できないことがあります。

「親名義の田があるけれど、自分は農業をしない」「遠方の土地を子どもには残したくない」「相続した土地を国に引き取ってもらえるのか知りたい」という場合には、まず土地の現況、登記、境界、面積、土地改良区等への負担の有無を整理することが大切です。

大志法務事務所では、相続登記だけでなく、土地の状況も確認しながら、内容に応じてご案内しています。

参考情報

掲載内容は2026年8月時点の公表情報をもとにしています。

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