相続した実家、とりあえず兄弟の共有名義で大丈夫? 後から困ることがあります

親が亡くなり、実家の相続について兄弟で話し合っていると、「誰が相続するか今すぐ決められないから、とりあえず兄弟全員の名義にしておこう」という話になることがあります。

一見すると公平ですし、問題を先送りできるようにも見えます。

しかし、不動産を共有名義にすると、その後の売却や管理、さらに次の相続まで考えたときに、手続が複雑になることがあります。

今回は、相続した不動産を共有名義にする前に知っておきたいポイントを解説します。

遺産分割が終わるまでは相続人の共有状態になります

亡くなった方が所有していた不動産について遺産分割がまとまっていない場合、法律上は相続人が法定相続分に応じて共有している状態になります。

法務局も、遺産分割協議がまとまるまでは、相続人が法律で定められた割合で不動産を共有する状態になると説明しています。

たとえば、父が亡くなり、母、長男、次男が相続人である場合、遺産分割をしなければ、それぞれに法定相続分があります。

ただし、法律上共有になることと、遺産分割の結果として、あえて共有名義の登記をすることは分けて考えた方がよいでしょう。

「公平だから共有」は分かりやすいのですが……

たとえば、父の遺産が実家だけで、長男と次男が相続人だったとします。

実家の価値が2,000万円なら、「兄だけが相続するのは不公平だから、2分の1ずつにしよう」という考え方は自然です。

共有名義にすれば、登記簿にも、長男 持分2分の1、次男 持分2分の1という形で記録できます。

法務局の資料でも、相続によって共有持分を取得するケースが示されています。

ただし、問題はその後、その不動産をどうするのかです。

実家を売りたくなったときに一人では決められません

共有不動産全体を売却するのであれば、共有者全員で対応する必要があります。

たとえば兄弟2人で実家を共有した後、兄「誰も住んでいないから売却したい」、弟「思い出のある家だから残したい」となれば、兄だけの判断で実家全体を売却することはできません。

相続した時点では兄弟仲が良くても、10年後、20年後まで同じ考えとは限りません。

転居、結婚、介護、経済状況などによって、それぞれの事情も変わっていきます。

共有名義にする場合は、「今は公平か」だけではなく「将来この不動産をどうする予定なのか」まで考えておくことが重要です。

自分の「持分」だけなら売れる?

共有者は、自分が所有している共有持分について処分できる場合があります。

つまり、兄が2分の1、弟が2分の1を所有している場合、兄が自分の2分の1の持分だけを第三者へ売却するということも法律上は考えられます。

法務局の所有権移転登記のチェックリストにも、「持分全部移転」「持分一部移転」という登記があることが示されています。

しかし、一般の方が、「知らない人と実家を2分の1ずつ共有したい」と思うことは通常あまりありません。

そのため、共有持分だけを売却する場合には、不動産全体を売却する場合とは事情が大きく異なります。

「自分の持分だから自由に売ればよい」と単純に考えない方がよいでしょう。

さらに怖いのは「次の相続」です

共有不動産で特に注意したいのが、共有者の一人が亡くなった場合です。

たとえば、兄 2分の1、弟 2分の1で実家を共有していたとします。

その後、兄が亡くなり、兄に妻と子ども2人がいた場合、兄の持分についてさらに相続が発生します。

その後、弟にも相続が発生すれば、共有者がさらに増える可能性があります。

最初は兄弟2人だけだった不動産が、世代を重ねることで、兄の妻、兄の子、弟の妻、弟の子など、多数の人が関係する不動産になってしまうことがあります。

法務局も、何世代も相続登記をしていない「数次相続」では、相続人が増え、多くの書類が必要になると案内しています。

相続人が増えるほど話し合いも難しくなります

共有者が増える問題は、登記が複雑になることだけではありません。

たとえば実家を売却したいと考えたとき、「遠方に住んでいる」「ほとんど会ったことがない」「連絡先が分からない」「売却に反対している」という共有者がいることも考えられます。

親の相続のときには簡単に話し合えたことが、次の世代では難しくなる可能性があります。

そのため、「とりあえず共有にしておけば公平」という判断が、将来の子どもたちに問題を残すこともあります。

共有にしない分け方も検討できます

相続財産が実家だけだからといって、必ず共有にしなければならないわけではありません。

たとえば、長男が実家を単独で相続し、他の相続人に代償金を支払うという方法を検討できる場合があります。

また、実家を売却することについて相続人全員の意見が一致しているのであれば、売却を前提として遺産分割を考えることもあります。

どの方法が適しているかは、不動産の価値、預貯金など他の相続財産、実家に住む人がいるか、将来売却する予定があるか、相続人それぞれの希望によって変わります。

「共有にするか、誰か一人が取得するか」だけで考えず、相続全体を見て決めることが大切です。

相続登記が義務化されたから、とりあえず共有登記?

2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。

相続によって不動産を取得したことを知った相続人には、原則として3年以内の申請義務があります。正当な理由なく義務に違反した場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

そのため、「期限があるなら、とりあえず法定相続分で全員の共有登記をしてしまおう」と考える方もいるかもしれません。

しかし、期限への対応だけを理由に、将来を十分検討しないまま共有名義を選択する必要はありません。

遺産分割がまとまらない場合などに、より簡易に申請義務を履行するための相続人申告登記という制度もあります。相続人申告登記では持分までは登記されず、通常の相続登記とは性質が異なります。

相続人申告登記については、以前のコラムでも詳しく取り上げています。

登記する前に「その不動産を10年後どうしたいか」を考える

相続登記では、「登記できるか」だけでなく、「どのような名義にするのが、その家族にとって適切なのか」を考えることが重要です。

特に実家については、誰かが住むのか、空き家になるのか、将来売却するのか、子どもの世代まで残すのかによって適切な方法が変わります。

共有名義そのものが悪いわけではありません。

相続人全員が共有の意味を理解し、その後の管理や処分についても認識を共有しているのであれば、共有が適している場合もあります。

大切なのは、「とりあえず」という理由だけで共有にしないことです。

大志法務事務所では、相続登記についてご相談を承っています。

遺産分割協議の内容に基づく相続登記、法定相続分による登記、相続人申告登記など、それぞれの違いを確認しながら必要な手続をご案内します。

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