家を取り壊したら、登記も自動で消える?
解体後に必要な「建物滅失登記」を忘れていませんか
「古くなった実家を解体した」
「空き家を取り壊して、更地にした」
「建物はもうないのだから、登記もそのうち消えるだろう」
そう思われる方もいるかもしれません。
しかし、建物を実際に取り壊しても、法務局にある建物の登記記録が自動的に消えるわけではありません。
現地では更地になっているのに、登記簿上では建物が存在したまま――。
この状態を解消するために行うのが、「建物滅失登記」です。
今回は、家や倉庫などを取り壊したときに必要となる建物滅失登記について、分かりやすくご説明します。
建物には「現実の姿」を記録する登記があります
不動産の登記というと、
「誰が所有者なのか」
「住宅ローンの抵当権が付いているか」
といった権利関係を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、建物の登記にはもう一つ重要な役割があります。
登記記録の「表題部」には、
- ・建物の所在
- ・家屋番号
- ・種類
- ・構造
- ・床面積
など、その建物がどのような建物なのかを示す情報が記録されています。
つまり登記は、権利関係だけでなく、現実に存在する不動産の状態を公示する役割も持っています。
そのため、建物が取り壊されて現実には存在しなくなったのであれば、登記記録についてもその状態に合わせる必要があります。
それが建物滅失登記です。
解体業者が取り壊しても、登記まで消してくれるわけではありません
例えば、登記されている一戸建て住宅を解体業者に依頼して完全に取り壊したとします。
解体工事が終われば、現地には建物がありません。
しかし、それだけでは法務局の登記記録は変わりません。
登記事項証明書を取得すると、取り壊したはずの建物が引き続き記載されていることがあります。
そこで、
「この建物はすでに滅失しています」
ということを登記に反映させるため、建物滅失登記を申請します。
建物滅失登記が完了すると、その建物についての登記記録は閉鎖されます。
「市役所に解体を届けたから大丈夫」とは限りません
ここは特に誤解されやすいところです。
建物を取り壊すと、市町村の固定資産税の手続や、解体業者からの情報などを通じて、行政側が建物の取壊しを把握する場合があります。
そのため、
「市役所には届けたから、法務局にも伝わっているだろう」
と思われることがあります。
しかし、
市町村が管理する固定資産税の情報と、法務局が管理する不動産登記は別の制度です。
固定資産税上、建物がなくなったことが把握されていても、それだけで必ず建物の登記記録まで自動的に閉鎖されるわけではありません。
逆に、登記を確認せず、
「固定資産税の明細に建物が載っていないから登記もないはず」
と判断するのも危険です。
建物を取り壊した後は、登記記録がどうなっているのかを確認することが大切です。
建物滅失登記には申請期限があります
建物の表示に関する登記は、不動産の現況を正確に公示するための制度です。
そのため、建物を取り壊した場合には、原則として滅失した日から1か月以内に建物滅失登記を申請する必要があります。
「売却するときにやればいい」
「相続が起きてから考えればいい」
という性質の手続ではありません。
もっとも、実際には、
「何十年も前に壊した建物の登記が残っていた」
というケースもあります。
1か月を過ぎてしまったからといって、もう滅失登記ができなくなるわけではありません。
古い建物の登記が残っていることに気付いた場合には、そのままにせず、現在の状況を確認した上で手続を検討することになります。
昔の建物が登記簿に残っていることもあります
例えば、相続した土地の登記事項を調べていると、
「こんな建物、見たことがない」
という建物の登記が見つかることがあります。
祖父母の代に取り壊した家屋だったり、昔あった物置や離れだったりすることもあります。
こうした場合に難しいのは、いつ、どのように建物がなくなったのか分からないことがある点です。
最近の解体であれば、解体業者から必要な資料を取得できることがあります。
一方、何十年も前の取壊しでは、
- ・解体業者が分からない
- ・解体業者がすでに廃業している
- ・当時の資料が残っていない
- ・いつ取り壊したのか家族も覚えていない
ということも珍しくありません。
その場合には、現在の現地状況だけでなく、登記記録、建物図面、固定資産関係資料、過去の資料などを確認しながら、建物がすでに存在しないことを整理していく必要があります。
相続した土地に「亡くなった親名義の建物」が残っていたら?
もう一つよく問題になるのが、所有者が亡くなった後に建物の滅失登記が必要になるケースです。
例えば、
父親名義の古い住宅を生前に取り壊していたものの、滅失登記をしないまま父親が亡くなった。
あるいは、
父親が亡くなった後、相続人が古い実家を取り壊した。
このような場合でも、登記記録をそのまま残しておいてよいわけではありません。
もっとも、登記名義人本人がすでに亡くなっているため、通常のケースとは確認すべき事項が増えます。
誰が相続人なのか、建物がいつ滅失したのかなど、状況を整理した上で手続を進めることになります。
相続した土地を売却しようとした段階で古い建物登記が見つかることもありますので、相続した不動産を調べるときは土地だけでなく建物の登記も確認することが重要です。
建物の「一部」を壊した場合はどうなる?
「建物を壊した」といっても、必ず建物全部がなくなるとは限りません。
例えば、
- ・2階建て住宅の一部を取り壊した
- ・増築部分だけを撤去した
- ・母屋は残して離れだけを取り壊した
- ・登記された附属建物の車庫だけを解体した
というケースがあります。
この場合、必ずしも建物全体の「滅失登記」になるわけではありません。
建物自体が残っていて床面積などが変わったのであれば、建物表題部変更登記など別の登記が必要になることがあります。
特に、
「どこまで壊せば建物が滅失したことになるのか」
「一部取壊しなのか、建物全体の滅失なのか」
は、単純に解体工事の名称だけで判断できるとは限りません。
現地の建物の状態と登記記録を確認して判断する必要があります。
登記簿の建物と、実際に壊した建物が一致しているかも重要です
建物滅失登記では、
「登記されているこの建物が、確かに取り壊された」
という確認が重要です。
新しい住宅であれば比較的分かりやすいのですが、古い建物では、
登記上の床面積と実際の建物が違う、
増築した部分が登記されていない、
附属建物が登記されている、
家屋番号と現地の住所だけでは建物を特定しにくい、
といったことがあります。
特に長年増改築を繰り返した建物では、現地の姿と登記記録が一致していないこともあります。
そのため、単に「建物がなくなった」というだけでなく、どの登記記録の建物がなくなったのかを特定することも大切になります。
更地を売却する予定なら、早めに確認しておきましょう
古家付きの土地を更地にして売却する場合、建物滅失登記が未了だと、売却手続の途中で対応が必要になることがあります。
買主から見れば、
現地には建物がないのに、登記上は建物が存在している、
という状態は好ましくありません。
不動産会社から、
「建物の滅失登記をしてください」
と言われて初めて気付くケースもあります。
売買の予定が決まってから慌てるよりも、解体が完了した段階で手続を済ませておく方がスムーズです。
建物滅失登記はオンライン申請にも対応しています
法務局では、建物滅失登記についてオンライン申請の仕組みも用意しています。
2026年8月3日には、登記・供託オンライン申請システムの「建物の滅失登記編」の操作手引書も更新されています。
ただし、オンラインで入力すればそれだけですべて完了するという意味ではありません。
申請内容に応じて必要な情報を準備する必要がありますし、書面で作成された添付情報を利用する場合には別途提出が必要になる場合もあります。
また、古い建物や、登記と現況が一致しない建物では、そもそもどのような登記をすべきなのかを先に確認した方がよい場合があります。
「壊したら終わり」ではなく、登記まで確認を
建物の解体工事は目に見えるため、
「これで建物のことは全部終わった」
と思いやすいものです。
しかし、不動産については、
現実の建物がなくなることと、登記記録から建物がなくなることは別です。
建物を取り壊したら、
「建物滅失登記は済んでいるだろうか」
まで確認しておくことをおすすめします。
特に、
- ・実家や空き家を解体した
- ・相続した土地に古い建物登記が残っている
- ・何十年も前に壊した建物が登記簿に出てきた
- ・建物の一部だけを取り壊した
- ・母屋や附属建物の関係がよく分からない
- ・更地として不動産を売却する予定がある
という場合は、早めに登記記録と現地の状況を確認しておくと安心です。
大志法務事務所では、司法書士業務に加えて土地家屋調査士業務も取り扱っています。
建物の登記について、
「これは滅失登記になるのか」
「古い建物の登記が残っているが、どうすればよいか」
「相続した土地に知らない建物の登記がある」
といった場合も、状況を確認しながら必要な手続をご案内します。
建物を壊した後こそ、現地だけでなく登記もきれいに整理されているか確認してみてください。
参考情報
法務局
「建物を取り壊した(建物滅失の登記をオンライン申請したい方)」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudosan_online04.html
登記・供託オンライン申請システム
「操作手引書【想定事例版】のダウンロード」
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/download_kani.html
法務局
「登記の申請を御検討されている皆さまへ」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00051.html
法務省
「不動産登記のABC」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji02.html
※制度改正などがあるテーマは、公開時点の情報を元に掲載しています。
