遺言書が見つかったら、すぐに開けていい?
家庭裁判所の「検認」は、遺言の有効性を保証する手続ではありません
「亡くなった父の机を整理していたら、『遺言書』と書かれた封筒が出てきた」
「何が書いてあるのか、家族で開けて確認してもよいのだろうか」
身近な方が亡くなった後、思いがけず遺言書が見つかることがあります。
大切なことが書いてあるはずですから、すぐに中を読みたいと思うのは自然なことです。
しかし、自宅などで保管されていた遺言書には、家庭裁判所での「検認」が必要になる場合があります。封印がある場合には、開封の方法にも注意が必要です。
これまでのコラムでは、法務局での遺言書の保管や、家族へ存在を知らせる通知を取り上げました。今回は、自宅で遺言書を見つけた後、どのように対応すればよいかをご説明します。
封印のある遺言書は、家族だけで開けないでください
自宅で保管されていた自筆証書遺言に封印がある場合、家庭裁判所で相続人等の立会いのもとに開封する必要があります。
「家族全員がそろっているから大丈夫」
「写真や動画を撮りながら開ければ問題ないだろう」
という判断で、家庭裁判所の手続に代えることはできません。
まずは封筒ごと、そのまま保管してください。封印に当たるのか判断に迷う場合も、無理に開けずに確認する方が安心です。
また、封がされていないことと、検認が不要であることは別です。
封筒に入っていない手書きの遺言書や、すでに開封されている遺言書でも、検認が必要になることがあります。検認は、単に「封筒を開けるための手続」ではないからです。裁判所「遺言書の検認」
検認は「この遺言は有効です」と認める手続ではありません
「裁判所で検認を受ければ、正式な遺言書として認めてもらえる」
そう理解されている方もいるかもしれません。
しかし、検認の役割は、それとは異なります。
検認では、遺言書の形や、日付・署名、訂正の状態などを確認し、その時点での状態を記録します。後から書き換えられたり、別のものに差し替えられたりすることを防ぐための手続です。
検認を受けたからといって、遺言が有効だと保証されるわけではありません。
例えば、
「本当に父が書いたものなのか」
「作成したとき、遺言の内容を理解できる状態だったのか」
といった点に争いがある場合、検認だけで結論が出るわけではありません。
反対に、検認の場で「この遺言は無効だと認めてほしい」と主張しても、その手続の中で有効・無効を決めてもらえるわけではありません。争いの解決には、別の手続を検討することになります。名古屋家庭裁判所「遺言書の検認」の手続案内
すべての遺言書に検認が必要なわけではありません
遺言書の種類や保管方法によって、扱いが変わります。
| 遺言書の種類・保管方法 | 検認 |
|---|---|
| 自宅などで保管されていた自筆証書遺言 | 必要 |
| 公正証書遺言 | 不要 |
| 法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言について交付される「遺言書情報証明書」 | 不要 |
したがって、遺言に関する書類が見つかったら、まず「どの種類の書類なのか」を確認することが大切です。
法務局の保管制度を利用した遺言書については、相続開始後、所定の手続で遺言書情報証明書を取得して利用します。自宅で見つかった手書きの遺言書とは、手続の進め方が異なります。裁判所「遺言書の検認」
誰が、どこの家庭裁判所へ申し立てるのでしょうか
検認を申し立てるのは、遺言書を保管している方や、遺言書を発見した相続人です。
申立先は、遺言を書いた方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。見つけた方の住所地や、不動産の所在地で決まるわけではありません。
法律上は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく検認を請求することとされています。
「一周忌で親族が集まったときに考えよう」
「不動産を売る予定ができてから手続しよう」
と、先延ばしにする性質のものではありません。山口家庭裁判所「遺言書検認の申立てについて」
亡くなった後の片付けで時間がたってから見つかることもあります。その場合も、発見した経緯を整理し、必要な手続を確認しましょう。
相続人全員が出席できなくても、検認は進められます
「兄弟が遠方に住んでいる」
「高齢の母は裁判所へ行くのが難しい」
このような事情があると、全員が集まれるまで何もできないと思われるかもしれません。
検認の申立てがあると、家庭裁判所から相続人へ、検認を行う日の通知が届きます。
ただし、申立人以外の相続人が出席するかどうかは、それぞれの判断に任されています。相続人全員がそろわなくても、検認は行われます。申立人は遺言書などを持参し、裁判所の指示に従います。裁判所「遺言書の検認」
検認は、家族全員で財産の分け方を決める話合いではありません。
「検認に出席すること」と「遺言の内容に賛成すること」も、分けて考える必要があります。
申立てには戸籍などの準備が必要です
検認は、遺言書だけを持って裁判所へ行けば、その場ですべて終わるとは限りません。
一般的には、次のような書類を準備します。
- 遺言書の検認申立書
- 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本類
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続関係に応じた追加の戸籍など
相続人を確認する必要があるため、家族関係によっては戸籍の収集に時間がかかります。必要書類や提出方法は、申立先の家庭裁判所の案内を確認してください。東京家庭裁判所「遺言書の検認」
裁判所の案内では、申立ての手数料は遺言書または封書1通につき収入印紙800円分で、別に連絡用の郵便料が必要です。検認後の検認済証明書の申請には、遺言書1通につき収入印紙150円分が必要です。裁判所「遺言書の検認」
このほか、戸籍の取得費用や、専門家へ依頼する場合の費用などがかかります。
誤って開封してしまった場合は、どうすればよい?
「遺言書だと気付かず、封筒を開けてしまった」
ということもあるでしょう。
その場合、開けてしまったから検認は不要、ということにはなりません。
裁判所の申立書にも、封印されていた遺言書を相続人が開封した場合や、すでに開封されている場合を記載する欄があります。東京家庭裁判所「遺言書検認申立書・記載例」
「もう使えないだろう」と自分で判断して捨てたり、開封したことが分からないように封筒を作り直したりしないでください。
遺言書と封筒を保管し、いつ、誰が、どのような状況で開封したのかを整理して、裁判所や専門家に伝えましょう。
これは、最初から開封してよいという意味ではありません。未開封であれば、その状態を保つことが大切です。
検認が終わっても、相続手続が全部終わるわけではありません
検認後は、検認済証明書を付けてもらい、遺言の内容に応じた手続へ進みます。
例えば、不動産の名義を変える場合には登記の手続が、預金を引き継ぐ場合には金融機関での手続が必要です。
名古屋家庭裁判所も、実際に遺言の内容を実行できるかどうかは、法務局や銀行、弁護士、司法書士などへ確認するよう案内しています。名古屋家庭裁判所「遺言書の検認」の手続案内
特に、不動産については「どの土地・建物を、誰が取得する内容なのか」を確認する必要があります。
検認済みの書類を受け取って安心するだけでなく、その先に必要な手続まで整理しておきましょう。
遺言書を見つけたら、まずは状態を変えずに相談を
遺言書を見つけたときは、内容を読むことや財産を分けることを急ぐ前に、次の点を確認してください。
- 自筆証書遺言なのか、公正証書遺言なのか
- 封印や開封の状況はどうなっているか
- いつ、どこで、誰が発見したのか
- 検認が必要な遺言書か
- 検認後に、どのような相続手続が必要か
大志法務事務所では、司法書士として、家庭裁判所へ提出する書類の作成支援や、必要な戸籍の整理、遺言に基づく相続登記などのご相談を承っています。
遺言の有効性などについて争いがある場合には、弁護士への相談が必要となることもあります。
「遺言書らしいものが見つかったけれど、何から始めればよいか分からない」
という段階でも、まずは状況をお聞かせください。
遺言書を見つけたら、状態を変えずに保管し、必要な手続を確認する。
それが、残された方の意思を適切な相続手続につなげるための第一歩です。
参考情報
- 裁判所:遺言書の検認
- 裁判所:遺言書の検認の申立書
- 名古屋家庭裁判所:「遺言書の検認」の手続とは…(PDF)
- 山口家庭裁判所:遺言書検認の申立てについて(PDF)
- 東京家庭裁判所:遺言書の検認
- 東京家庭裁判所:遺言書検認申立書・記載例(PDF)
※2026年9月4日時点で確認した公式情報を基に作成しています。実際の申立てに当たっては、申立先の家庭裁判所の最新の案内をご確認ください。
