家を増築したら、登記簿の床面積も自動で変わる?
増築・減築後に確認したい「建物表題部変更登記」

「子ども部屋を増築した」

「平屋だった住宅を2階建てにした」

「使わなくなった部分を取り壊して、建物が小さくなった」

このような工事をしたとき、建築会社や市役所が法務局にも連絡して、登記簿の内容を自動的に変更してくれると思っていないでしょうか。

しかし、建物を増築・減築しても、法務局にある建物の登記記録が自動的に書き換わるわけではありません。

建物の種類、構造、床面積などが変わった場合には、実際の建物の状態に合わせるための建物表題部変更登記が必要になることがあります。

今回は、どのような工事で建物表題部変更登記が必要になるのか、登記をしないままにすると何が問題になるのかをご説明します。

建物の登記簿には「現実の姿」が記録されています

建物の登記記録は、大きく「表題部」と「権利部」に分かれています。

権利部には、誰が所有者なのか、住宅ローンの抵当権が付いているかといった権利関係が記録されます。

一方、表題部には、

  • 建物の所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 各階の床面積
  • 附属建物がある場合はその種類、構造、床面積

など、建物の物理的な状態が記録されています。

例えば、

「居宅」

「木造かわらぶき2階建」

「1階80平方メートル、2階40平方メートル」

というように、その建物がどのような姿をしているのかが登記によって公示されています。

そのため、工事によって現実の建物が変わったときは、登記記録も現在の状態に合わせる必要があります。

建物表題部変更登記が必要になる主なケース

建物表題部変更登記が必要になる可能性があるのは、次のような場合です。

  • 部屋や台所などを増築して床面積が増えた
  • 建物の一部を取り壊して床面積が減った
  • 平屋を2階建てにした
  • 2階部分を取り壊して平屋にした
  • 木造部分を取り壊して鉄骨造などに改築した
  • 屋根の種類など建物の構造が変わった
  • 住宅の全部または一部を店舗や事務所へ変更した
  • 敷地内に車庫、物置、離れなどを新築した
  • 登記されている附属建物だけを取り壊した

日本土地家屋調査士会連合会も、子ども部屋の増築、敷地内への離れの建築、自宅の一部を店舗にした場合などには、建物の表示変更登記を行うと案内しています。日本土地家屋調査士会連合会「相談Q&A」

ただし、工事を行ったからといって、必ず同じ登記になるわけではありません。

建物のどの部分を、どのように変更したのかによって、必要な登記を判断します。

建物全部を壊した場合とは登記が違います

以前のコラムでは、建物を完全に取り壊した場合の「建物滅失登記」を取り上げました。

建物全部がなくなった場合には、その建物の登記記録を閉鎖する建物滅失登記を申請します。

一方、

「母屋の一部だけを取り壊した」

「母屋は残っているが、附属建物の車庫を取り壊した」

「増築によって床面積が変わった」

という場合は、建物そのものが残っています。

この場合は、建物全体の滅失登記ではなく、建物表題部変更登記になることがあります。

反対に、古い建物を全部取り壊し、同じ場所に新しい建物を建てた場合には、単なる床面積の変更ではありません。

一般的には、古い建物について建物滅失登記を行い、新しい建物について建物表題登記を行います。

建物が以前の建物と同一なのか、それとも別の建物になったのかも、必要な登記を判断する重要なポイントです。

車庫や物置を建てたら「附属建物」になる?

母屋が登記されている敷地内に、別棟の車庫や物置を建てることがあります。

この車庫や物置が、母屋と利用上の関係がある場合には、母屋の「附属建物」として登記することがあります。

ただし、同じ敷地に建っているからといって、必ず附属建物になるわけではありません。

  • 母屋と所有者が同じか
  • 母屋の利用を補助する建物なのか
  • 独立した用途や機能を持つ建物ではないか
  • 建物として登記できるだけの構造や定着性があるか

などを確認する必要があります。

ホームセンターで購入した簡易な物置や、容易に移動できる設備は、不動産登記上の建物として認定されない場合もあります。

一方、基礎があり、屋根や周壁を備え、継続的に車庫や倉庫として利用できる建物であれば、登記の対象になる可能性があります。

現地の状況を確認しなければ、単純には判断できません。

建築確認や固定資産税の手続とは別です

増築工事を行うと、工事内容によっては建築確認の申請や完了検査が必要になります。

また、市町村が増築を把握すると、翌年度以降の固定資産税の評価に反映されることがあります。

そのため、

「建築確認を受けたから、登記も変更されているだろう」

「固定資産税が増えたから、法務局にも増築が登録されているはず」

と思われることがあります。

しかし、

  • 建築確認や建築基準法上の手続
  • 市町村が管理する固定資産税の情報
  • 法務局が管理する不動産登記

は、それぞれ別の制度です。

建築確認を受けたことや、固定資産税の課税内容が変わったことだけで、建物の登記記録が自動的に変更されるわけではありません。

増築や減築が終わったら、登記事項証明書を取得し、登記上の床面積や構造が現況と一致しているか確認することが大切です。

原則として変更から1か月以内に申請します

建物の表題部に記録されている事項に変更があった場合、表題部所有者または所有権の登記名義人には、原則として変更があった日から1か月以内に変更登記を申請する義務があります。

正当な理由なく申請を怠った場合には、10万円以下の過料に処される可能性があります。e-Gov法令検索「不動産登記法」第51条・第164条

「いつか売却するときに直せばよい」

「固定資産税を払っているから問題ない」

という手続ではありません。

もっとも、実際には増築から何年も経過した後、売却や相続をきっかけに未登記の増築部分が見つかることがあります。

1か月を過ぎたからといって、登記できなくなるわけではありません。

気付いた時点で、工事時期や建物の現況を確認し、必要な登記を進めることになります。

昔の増築では資料が残っていないことがあります

最近の工事であれば、

  • 建築確認関係の書類
  • 検査済証
  • 建築会社との契約書や見積書
  • 工事図面
  • 工事完了を確認できる書類

などが残っていることがあります。

一方、何十年も前の増築では、

「どの建築会社が工事したか分からない」

「両親が増築したため、詳しい時期を知らない」

「図面や領収書が残っていない」

ということもあります。

この場合でも、現在の建物を調査し、既存の登記記録、建物図面、各階平面図、固定資産関係資料、航空写真などを確認しながら、変更内容や時期を整理していきます。

古い増築では、現在の建物のどこまでが元の登記部分で、どこからが増築部分なのか分かりにくいこともあります。

資料が少ないほど確認に時間がかかることがありますので、売却などの予定がある場合は早めの調査が必要です。

登記上の床面積と工事の図面が一致するとは限りません

建築会社の図面に記載された床面積を、そのまま登記簿へ記載できるとは限りません。

建築基準法上の床面積と、不動産登記上の床面積では、算定の基準が異なる場合があるためです。

例えば、吹き抜け、出窓、バルコニー、車庫、屋根裏、サンルームなどは、その形状や構造によって床面積に算入されるかどうかを個別に判断する必要があります。

建物表題部変更登記では、土地家屋調査士が現地を確認し、登記上の基準に基づいて建物を測量し、各階平面図などを作成します。

法務局も、建物の表題登記や土地の分筆など、不動産の表示に関する登記を代理して行う専門家は土地家屋調査士であると案内しています。法務局「不動産登記申請手続」

売却や住宅ローンの手続で発覚することがあります

増築部分が登記されていなくても、普段の生活ですぐに困るとは限りません。

そのため、長期間そのままになっているケースがあります。

しかし、建物を売却するときや、住宅ローンの借換え、担保設定などを行うときには、金融機関や不動産会社が登記記録と現地を確認します。

その際、

「登記簿は平屋なのに、現地は2階建てになっている」

「登記簿の床面積より、実際の建物が大きい」

「現地には車庫があるのに、登記されていない」

ということが分かると、取引の前に建物表題部変更登記を求められることがあります。

古い工事で資料がなく、現地調査や必要書類の収集に時間がかかれば、売却や融資の日程に影響する可能性もあります。

不動産を売ることが決まってから慌てるのではなく、早い段階で登記と現況を確認しておくと安心です。

相続した実家にも増築部分がないか確認しましょう

相続した実家について、土地と建物の名義変更だけを考えていると、増築部分の未登記を見落とすことがあります。

例えば、父親名義の建物について相続登記を進めようとしたところ、

「登記簿では床面積80平方メートルだが、実際には120平方メートルある」

ということがあります。

亡くなった方が生前に増築していた場合、相続登記とは別に、建物の現況を登記へ反映する手続が必要になることがあります。

また、元の建物自体が登記されていない場合には、建物表題部変更登記ではなく、建物表題登記から検討します。

相続した不動産を確認するときは、名義だけでなく、

建物の種類、構造、床面積、附属建物が現況と一致しているか

まで確認することが大切です。

工事が終わったら、登記簿も現在の姿に合わせましょう

増築や減築は、実際の建物を変える工事です。

しかし、工事が完成しただけでは、法務局の登記記録は変わりません。

特に、

  • 家を増築した
  • 建物の一部を取り壊した
  • 平屋を2階建てにした
  • 住宅の一部を店舗や事務所にした
  • 車庫、物置、離れを建てた
  • 附属建物だけを取り壊した
  • 相続した実家の床面積が登記簿と違う
  • 売却や融資を予定している

という場合には、建物の現況と登記記録を確認しましょう。

大志法務事務所では、土地家屋調査士業務として、建物表題登記、建物表題部変更登記、建物滅失登記などを取り扱っています。

「この工事は登記が必要なのか」

「昔の増築部分が登記されていない」

「登記簿と実際の床面積が違う」

という場合には、既存の登記記録や資料、現地の状況を確認し、必要な手続をご案内します。

建物の工事は、建物が完成したところで終わりではありません。登記簿も現在の姿と一致しているか、忘れずに確認しましょう。

参考情報

法務局「不動産登記申請手続」

法務局「不動産登記及び商業・法人登記の申請書様式一覧」

法務局「登記申請を御自身ですることを検討されている方からよくある質問」

e-Gov法令検索「不動産登記法」

e-Gov法令検索「不動産登記規則」

日本土地家屋調査士会連合会「相談Q&A」

※2026年9月7日時点で確認した公式情報を基に作成しています。法令、申請方法、必要書類などは変更されることがありますので、実際に手続を行う際は最新の公式情報をご確認ください。