会社の定款が見つからない!
登記事項証明書で代わりになる? 紛失したときの確認方法

「銀行から定款の提出を求められたけれど、どこに保管したか分からない」

「会社を設立したときの書類はあるものの、どれが現在の定款なのか判断できない」

「登記事項証明書を取れば、定款の代わりになるのでは?」

会社を長く経営していると、このような場面に直面することがあります。

設立時には大切に保管していた定款も、事務所の移転や代表者の交代、書類整理などをきっかけに見つからなくなることがあります。

しかし、定款と登記事項証明書は、それぞれ役割の異なる書類です。

登記事項証明書を取得しても、定款の内容をすべて確認できるわけではありません。

今回は、会社の定款が見つからない場合に、どのような順序で確認すればよいのかをご説明します。

定款は「会社の基本ルール」を定めた書類です

定款とは、会社の組織や運営に関する基本的なルールを定めた書類です。

株式会社の定款には、例えば次のような事項が記載されています。

  • 会社の目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 発行可能株式総数
  • 株式の譲渡制限
  • 株主総会の招集方法
  • 取締役の人数や任期
  • 事業年度
  • 公告方法

このうち、商号、目的、本店、公告方法など、法令上登記することとされている事項は登記記録にも反映されます。

一方、定款には、株主総会の運営方法や役員の任期など、登記事項証明書だけでは内容を十分に確認できない規定も含まれています。

そのため、会社の現在のルールを確認するには、登記事項証明書だけでなく定款も必要です。

登記事項証明書は定款の代わりにはなりません

登記事項証明書は、法務局に登記された会社情報を証明する書類です。

会社の商号、本店、目的、資本金、役員などを確認でき、誰でも交付を請求できます。

ただし、そこに記載されるのは、あくまで法律上の登記事項です。

例えば、定款で取締役の任期を短縮または伸長していたとしても、具体的な任期の定めは通常、登記事項証明書には記載されません。

株主総会の招集手続や、定時株主総会を開催する時期などについても同様です。

したがって、

「登記事項証明書を取得したので、定款がなくても問題ない」

とはいえません。

会社法では、会社が定款を本店や支店に備え置くことや、一定の場合に株主や会社債権者が閲覧・謄写を請求できることも定められています。

定款は、設立時に一度だけ作って終わりという書類ではなく、会社が存続している間、適切に保管すべき重要書類です。

まずは設立時の書類や電子データを探しましょう

定款が見つからないときは、最初から新しい定款を作ろうとせず、設立時や過去の変更時の資料を確認します。

例えば、次のような場所に残っている可能性があります。

  • 会社設立時の書類ファイル
  • 登記関係書類をまとめたファイル
  • パソコンや外部記録媒体
  • メールの添付ファイル
  • クラウドストレージ
  • 電子定款を保存したCDやUSBメモリー
  • 過去の株主総会議事録と一緒に保管された書類

会社設立を専門家へ依頼していた場合は、当時の司法書士、行政書士などがデータを保管している可能性もあります。

ただし、保存期間や管理状況は依頼先によって異なるため、必ず残っているとは限りません。心当たりがある場合は、早めに確認するとよいでしょう。

株式会社なら、認証した公証役場で確認できる場合があります

株式会社を設立するときの最初の定款を「原始定款」といいます。

株式会社の原始定款は、公証人による認証を受けなければ効力が生じません。

そのため、会社に定款が残っていなくても、設立時に認証を受けた公証役場で、原始定款の謄本請求や閲覧ができる場合があります。

日本公証人連合会は、定款の認証を受けた発起人、その承継人、定款について法律上の利害関係がある人について、認証した公証役場で謄本の交付請求や閲覧請求ができると案内しています。

ただし、本人確認書類や会社との関係を証明する資料などが必要になることがあります。

また、公証役場での保存期間を過ぎている場合や、どの公証役場で認証したのか分からない場合もあります。請求を希望するときは、まず該当する公証役場へ確認してください。

公証役場で取得できるのは「設立時の定款」です

ここで注意したいのは、公証役場で確認できる定款が、基本的には会社設立時に認証された原始定款だという点です。

会社は、設立後に株主総会の決議などによって定款を変更できます。

例えば、

  • 会社の目的を追加した
  • 商号を変更した
  • 本店所在地の定め方を変更した
  • 株式の譲渡制限を設けた
  • 取締役の任期を変更した
  • 公告方法を変更した

ということがあれば、設立時の定款と現在有効な定款の内容は一致しません。

公証役場から原始定款の謄本を取得できても、それだけで現在の定款が完全に復元できるとは限らないのです。

「原始定款」と「現在の定款」を区別しましょう

会社設立後に定款変更を重ねている場合は、次の資料を照合する必要があります。

  • 設立時の原始定款
  • 定款変更を決議した株主総会議事録
  • 過去の登記事項証明書や閉鎖事項証明書
  • 現在の登記事項証明書
  • 変更登記を申請した際の控え
  • 会社に残っている過去の定款

例えば、設立時の定款に記載された会社の目的を、その後の株主総会で追加していたとします。

この場合、公証役場から取得した原始定款には、追加後の目的は記載されていません。

原始定款と目的変更を決議した株主総会議事録などを確認し、変更後の内容を反映した定款を整理する必要があります。

このように、現在有効な内容を一つの書面にまとめたものは、一般に「現行定款」と呼ばれます。

内容を推測して作り直すのは危険です

定款を紛失したからといって、登記事項証明書だけを見ながら、内容を推測して作り直すことはおすすめできません。

登記事項証明書に載っていない規定について、設立時や過去の変更内容と異なる文言を入れてしまう可能性があるためです。

特に注意が必要なのは、

  • 株主総会の招集手続
  • 取締役や監査役の員数
  • 役員の任期
  • 株式の譲渡承認機関
  • 基準日
  • 事業年度
  • 剰余金の配当
  • 株券を発行するかどうか

などの規定です。

定款を整理する過程で、従来とは異なる内容へ変更したい場合には、その変更について適法な株主総会決議などが必要になります。

単に新しい文書を作成し、代表取締役が押印しただけで、過去の定款変更手続の不足まで解消されるわけではありません。

株主総会議事録が見つからない場合はどうする?

定款だけでなく、過去の株主総会議事録も見つからないことがあります。

この場合、現在の登記事項証明書から、商号、目的、本店、役員などの現状を確認することはできます。

さらに、閉鎖事項証明書などを取得すると、過去の登記事項の変更経過を確認できる場合があります。

しかし、登記されていない定款規定の変更履歴までは、登記記録から分かりません。

過去の登記申請書類の控え、税務・会計関係のファイル、専門家とのメール、金融機関などへ提出した定款の写しも確認し、資料をできる限り集めることが大切です。

資料が十分に残っていない場合は、判明している事実と現在の会社運営状況を整理したうえで、今後の定款内容や必要な決議を検討します。

合同会社では公証役場の認証がありません

合同会社にも定款は必要です。

ただし、株式会社とは異なり、合同会社の設立時の定款には公証人の認証が必要ありません。

そのため、合同会社の定款を紛失しても、公証役場から認証済みの原始定款を取得するという方法は利用できません。

会社内部に残る紙の定款や電子データ、設立手続を依頼した専門家の資料、設立登記の控えなどを確認することになります。

社員の加入や退社、業務執行社員や代表社員の変更、利益配分など、合同会社の運営では定款の内容が特に重要になることがあります。

合同会社では、設立時から定款の紙面と電子データを複数の場所に保管しておくと安心です。

定款が必要になるのはどんなとき?

普段の営業では定款を使う機会が少なくても、次のような場面で提出や確認を求められることがあります。

  • 銀行口座の開設や融資の申込み
  • 許認可の取得や更新
  • 補助金や助成金の申請
  • 取引先による会社確認
  • 株式の譲渡
  • 役員変更や組織変更の検討
  • 事業承継
  • 会社の売却や合併
  • 株主や債権者からの閲覧請求

必要になってから探し始めると、手続が予定どおり進まないことがあります。

定款が手元にある会社でも、それが設立時のまま更新されておらず、現在の登記や実際の運営と合っていないことがあります。

この機会に、「定款があるか」だけでなく、「現在有効な内容になっているか」まで確認することが重要です。

今後は定款と変更資料を一緒に保管しましょう

定款を復元・整理した後は、同じ問題が起きないように保管方法を見直しましょう。

例えば、

  • 現行定款を紙とPDFの両方で保存する
  • 紙の原本と電子データを別の場所に保管する
  • 定款変更のたびに現行定款を更新する
  • 株主総会議事録を変更前後の定款と一緒に保管する
  • ファイル名に作成日や改定日を入れる
  • 誰が原本を管理するか決めておく

といった方法があります。

特に、ファイル名がすべて「定款」となっていると、どれが最新か分からなくなります。

「定款(2026年9月9日現在)」など、基準日が分かる形で管理すると確認しやすくなります。

定款が見つからないときは、資料を集めて順番に確認を

会社の定款が見つからなくても、すぐに会社運営ができなくなるわけではありません。

しかし、登記事項証明書だけで定款を完全に代用することはできません。

株式会社であれば、まず設立時の書類や電子データを探し、必要に応じて認証した公証役場で原始定款を確認します。

そのうえで、設立後の株主総会議事録や登記の変更履歴を照合し、現在有効な定款の内容を整理します。

合同会社の場合は、公証役場に認証済み定款が残っていないため、会社内部の資料を一層丁寧に確認する必要があります。

大志法務事務所では、

「定款がどこにも見つからない」

「公証役場から原始定款を取得したが、その後の変更が分からない」

「手元の定款と登記事項証明書の内容が違っている」

「現在の会社に合った定款へ見直したい」

といったご相談にも対応しています。

原始定款、株主総会議事録、登記事項証明書などを確認し、現在の定款内容の整理や、必要な定款変更、議事録作成、変更登記をご案内します。

定款は会社の基本ルールです。

見つからないままにせず、必要な資料を集め、現在の会社の状態と一致しているか確認しておきましょう。

参考情報

e-Gov法令検索「会社法」

日本公証人連合会「定款認証」

法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」

法務省「合同会社の設立手続について」

法務省「商業・法人登記Q&A」

法務局「商業・法人登記申請手続」

※2026年9月8日時点で確認した公式情報を基に作成しています。個別の手続では、会社形態、定款の変更履歴、保管資料などによって確認事項が異なります。