新築した家、住所が決まれば登記も自動でできる?
「建物表題登記」と「所有権保存登記」は別の手続です

「新築した家がもうすぐ完成する」

「市役所から新しい住所も通知された」

「住宅ローンの手続も進んでいるので、建物の登記も自動的にできるのだろう」

初めて家を建てる方にとって、建物の登記は分かりにくい手続の一つです。

工務店やハウスメーカーが建築確認や完了検査の手続をしているため、登記についても建築会社や市役所が自動的に行ってくれると思われることがあります。

しかし、建物が完成しても、法務局に建物の登記記録が自動的に作られるわけではありません。

新築した建物については、一般に、

  1. 建物表題登記
  2. 所有権保存登記
  3. 住宅ローンがある場合は抵当権設定登記

という順番で手続を進めます。

今回は、新築住宅の登記で混同されやすい「建物表題登記」と「所有権保存登記」の違い、手続の順番、名義を決めるときの注意点をご説明します。

新築直後の建物には、まだ登記記録がありません

土地については、通常、すでに法務局の登記記録が存在しています。

一方、新しく建てられた建物は、それまで存在していなかった不動産です。

建物が完成しただけでは、法務局は、

・どこに建っているのか
・どのような用途の建物なのか
・木造なのか鉄骨造なのか
・何階建てなのか
・床面積はどれくらいなのか
・誰が建築したのか

といった情報を正確に把握できません。

そこで、最初に建物の物理的な状況を法務局へ届け出て、登記記録の表題部を作ります。

この手続が、建物表題登記です。

建物表題登記には、建物の現況が記録されます

建物表題登記が完了すると、登記記録の表題部に、主に次のような情報が記録されます。

・所在
・家屋番号
・種類
・構造
・床面積
・原因およびその日付
・所有者として記録される人

例えば、一般的な一戸建て住宅であれば、

「居宅」

「木造かわらぶき2階建」

「1階○○平方メートル、2階○○平方メートル」

など、その建物の現実の姿を示す情報が記録されます。

ここでいう「種類」は、居宅、店舗、事務所、共同住宅、物置、車庫など、建物の主な用途を示すものです。

「構造」は、建物の材料、屋根の種類、階数などによって定められます。

建築確認申請書に記載された内容をそのまま転記すればよいとは限らず、完成した建物の現況に基づいて判断します。

建築確認や完了検査と、建物表題登記は別の制度です

家を建てるときには、建築基準法に基づく建築確認や完了検査が行われます。

しかし、これらは建物が建築基準関係規定に適合しているかを確認するための手続です。

法務局が管理する不動産登記とは、目的も手続先も異なります。

そのため、

「検査済証が交付されたから、登記も終わっている」

ということにはなりません。

建築確認申請、完了検査、住居表示の届出、固定資産税の調査、建物登記は、それぞれ別の制度です。

一つの手続が終わったからといって、ほかの手続まで自動的に完了するわけではありません。

市役所で決まる「住所」と、登記上の所在・家屋番号は同じとは限りません

新築住宅では、市役所などへ新築届を提出し、住居表示による住所が決まる場合があります。

例えば、

「○○市○○町一丁目2番3号」

という住所です。

一方、建物の登記では、土地の地番をもとに「所在」が記録され、法務局が「家屋番号」を定めます。

住居表示による住所と、登記上の所在・家屋番号は、それぞれ役割が異なります。

したがって、

「住所が決まったから、建物の登記も作られた」

とは限りません。

郵便物や住民票に使う住所が決まっていても、法務局には建物の登記記録がまだ存在しないことがあります。

建物表題登記には原則として1か月以内という期限があります

不動産登記法では、新築した建物の所有権を取得した人は、原則として、その所有権を取得した日から1か月以内に建物表題登記を申請しなければならないとされています。

「住宅ローンの登記をするときにまとめて行えばよい」

「住み始めてから時間ができたときに行えばよい」

という手続ではありません。

建物がいつ完成し、いつ所有権を取得したと判断されるかについては、工事完了日、引渡日、請負契約の内容などを確認する必要があります。

完成後は、建築会社から必要書類を受け取り、早めに準備を始めることが大切です。

建物表題登記では、どのような資料を確認する?

建物表題登記では、一般に次のような資料が関係します。

・建築確認済証
・確認申請書
・検査済証
・工事完了引渡証明書
・建築会社の資格証明書や印鑑証明書
・建築請負契約書
・工事代金の領収書や振込記録
・建物図面
・各階平面図
・所有者の住所を確認する書類
・敷地となる土地の資料

ただし、建築方法や所有関係によって必要な資料は異なります。

個人の大工に依頼した場合、複数の業者が工事を担当した場合、建築会社が廃業した場合、親族が費用を負担した場合などは、誰が建物の所有権を取得したのかを確認するため、追加資料が必要になることがあります。

建築会社から受け取った書類は、登記が終わるまで処分しないようにしましょう。

表題登記が終わっただけでは「所有権の登記」は完成していません

建物表題登記が完了すると、建物の登記記録が作られます。

しかし、この段階で作られるのは、建物の物理的な状況などを記録する表題部です。

その後、権利部の甲区に、

「この建物の所有者は誰か」

という所有権の登記を行います。

これが、所有権保存登記です。

新築建物は、それまで誰の所有権も登記されていないため、最初の所有権登記を「保存登記」と呼びます。

中古住宅を購入したときに行う所有権移転登記とは異なります。

表題部の所有者欄と所有権保存登記は何が違う?

建物表題登記にも、所有者として建築主などの氏名や住所が記録されます。

そのため、

「表題部に自分の名前が載ったのだから、所有権保存登記は必要ないのでは?」

と思われることがあります。

しかし、表題部の所有者に関する記録と、権利部に行う所有権保存登記は同じものではありません。

所有権保存登記を行うことで、権利部の甲区に所有者の住所・氏名や持分などが記録されます。

その後、その建物を売却したり、贈与したり、住宅ローンの抵当権を設定したりする場合には、原則として所有権保存登記が必要になります。

住宅ローンを利用して新築する場合は、金融機関の融資実行と抵当権設定登記に合わせて所有権保存登記を行うのが一般的です。

建物表題登記と所有権保存登記では、専門家の役割も異なります

建物表題登記は、建物の所在、種類、構造、床面積など、現況を明らかにする「表示に関する登記」です。

この手続を代理する専門家は、土地家屋調査士です。

一方、所有権保存登記や抵当権設定登記は「権利に関する登記」であり、これらを代理する専門家は、司法書士です。

新築住宅の登記では、

  1. 土地家屋調査士が建物表題登記を申請
  2. 司法書士が所有権保存登記を申請
  3. 住宅ローンがある場合は司法書士が抵当権設定登記を申請

という流れになることがあります。

表題登記と権利登記は密接に関係するため、決済日や融資実行日から逆算し、関係者間で日程を調整することが重要です。

夫婦共有にする場合は、表題登記の段階から持分を確認します

前回のコラムでは、夫婦が住宅を購入するとき、実際の資金負担と登記持分が異なると、夫婦間の贈与が問題になる場合があることをご説明しました。

新築住宅でも同じです。

例えば、夫婦がそれぞれ資金を出して家を建てたのであれば、自己資金、住宅ローン、親からの援助などを確認し、誰がどれだけ建築資金を負担したのかを整理します。

その上で、建物表題登記に記録する所有者と持分を決めます。

表題登記では夫単独、所有権保存登記では夫婦共有というように、途中で安易に名義を変えると、追加の資料や税務上の検討が必要になることがあります。

建物が完成してから慌てて決めるのではなく、住宅ローンの契約や建築資金の支払い内容が固まった段階で確認しておくことをおすすめします。

建物表題登記が遅れると、住宅ローンの日程にも影響します

住宅ローンを利用する場合、金融機関は通常、新築した土地・建物に抵当権を設定します。

しかし、建物の登記記録がなければ、その建物について抵当権設定登記を行うことができません。

そのため、融資実行や建物の引渡しの日程に合わせて、事前に建物表題登記を完了させる必要があります。

表題登記には、現地調査、図面作成、資料確認、法務局での審査などの時間が必要です。

建築会社からの書類が不足していたり、確認申請の内容と完成した建物が異なっていたりすると、予定より時間がかかることもあります。

「引渡しの数日前に相談すれば間に合う」とは限りませんので、完成予定日が分かった段階で早めに準備しましょう。

建築会社が登記を全部してくれるとは限りません

建築会社やハウスメーカーが、提携する土地家屋調査士や司法書士を紹介することはあります。

ただし、建築会社自身が登記手続を代理するわけではありません。

また、建築請負契約の中に登記費用が含まれているか、誰に依頼する予定になっているかは、会社や契約によって異なります。

次の点を確認しておくと安心です。

・建物表題登記は誰に依頼するのか
・所有権保存登記は誰に依頼するのか
・住宅ローンの抵当権設定登記を担当する司法書士は誰か
・登記費用は見積りに含まれているか
・建築会社から必要書類がいつ交付されるか
・融資実行日までに表題登記が完了する日程になっているか

「建築会社が何とかしてくれるだろう」と思い込まず、担当者と具体的に確認しましょう。

「家が完成したら終わり」ではなく、登記まで確認しましょう

新築住宅では、工事の完成、引渡し、引っ越し、住民票の異動、住宅ローン、火災保険など、多くの手続が重なります。

そのため、登記の違いまで理解する余裕がないこともあります。

しかし、

建物表題登記は、建物の現況を登記する手続

所有権保存登記は、その建物の所有権を初めて登記する手続

であり、それぞれ目的が異なります。

住宅ローンを利用する場合には、その後に抵当権設定登記も続きます。

大志法務事務所では、土地家屋調査士業務として建物表題登記を、司法書士業務として所有権保存登記や抵当権設定登記を取り扱っています。

新築住宅について、

「どの登記から始めればよいか分からない」

「建築会社から受け取った書類で足りるだろうか」

「夫婦共有にする場合の持分を確認したい」

「住宅ローンの融資日に間に合わせたい」

という場合には、建物の完成前からご相談いただけます。

家が完成したら、住所だけでなく、建物の登記記録と所有権の登記まで正しく整っているか確認しましょう。

参考情報

e-Gov法令検索
不動産登記法

法務局
不動産登記申請手続

法務局
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※制度改正などがあるテーマは、公開時点の情報を元に掲載しています。