相続登記の戸籍は、どこからどこまで必要?
「亡くなったときの戸籍だけ」では足りない理由を解説します

親が亡くなり、相続登記をしようとして戸籍を集め始めたら、

「死亡したことが分かる戸籍があるのに、なぜ昔の戸籍まで必要なの?」

「出生までさかのぼると言われたけれど、本当に全部必要?」

「戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍……何が違うの?」

と疑問に思われる方は少なくありません。

相続登記では、単に「この人が亡くなった」ということだけではなく、「誰が法定相続人なのか」を戸籍によって確認する必要があります。

そのため、原則として亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍を確認します。

今回は、相続登記ではどこまで戸籍を集める必要があるのかを整理します。

1.なぜ「死亡時の戸籍」だけでは足りないの?

例えば、父が亡くなり、母と長男・長女が相続人だと家族全員が分かっていたとします。

死亡時の戸籍を見れば、妻や現在の子どもが記載されていることもあります。

それでも、その戸籍だけでは、

  • 過去の婚姻で子どもがいなかったか
  • 認知した子どもがいなかったか
  • 現在の戸籍が作られる前に記載されていた子どもがいなかったか
  • 養子縁組をしていなかったか

などを完全には確認できないことがあります。

相続登記では、家族から聞いた話だけではなく、戸籍上、他に相続人がいないことまで確認する必要があります。

そのため、現在の戸籍から一つずつ前の戸籍へさかのぼり、原則として出生まで確認していきます。

2.「出生から死亡まで」とは、戸籍1通という意味ではありません

「出生から死亡までの戸籍をください」と聞くと、1通の戸籍に一生の出来事が全部載っているように思われるかもしれません。

実際には、1人の方について複数の戸籍が存在することが一般的です。

例えば、

出生
↓
親の戸籍に入っている
↓
結婚して新しい戸籍を作る
↓
法律改正・戸籍のコンピュータ化などで戸籍が作り替えられる
↓
転籍する
↓
死亡

という経過があれば、その途中で複数の戸籍が作られます。

そのため、相続登記では現在または死亡時の戸籍から前の戸籍をたどって、出生までつなげていきます。

重要なのは戸籍の「通数」ではなく、出生から死亡までの身分関係が途切れず確認できることです。

3.「除籍謄本」「改製原戸籍」って何?

戸籍を集めていると、

戸籍全部事項証明書

除籍謄本

改製原戸籍謄本

といった名称が出てきます。

簡単に整理すると、現在使われている戸籍が一般に「戸籍謄本」と呼ばれるものです。

一方、その戸籍にいた人が死亡、婚姻、転籍などによって全員いなくなった戸籍などは「除籍」となります。

また、法律の改正や戸籍の様式変更によって新しい戸籍へ作り替えられる前の古い戸籍を「改製原戸籍」といいます。

相続人を確認する際には、現在の戸籍だけでなく、こうした除籍や改製原戸籍までさかのぼる必要がある場合があります。

「現在の戸籍に名前がないから関係ない」というわけではありません。

4.亡くなった方の戸籍だけ集めればいい?

相続登記では、被相続人の出生から死亡までの戸籍だけで終わるとは限りません。

相続人についても、通常、被相続人が亡くなった後に作成された戸籍などによって、相続人であることや現在の身分関係を確認します。

例えば父が亡くなり、母・長男・長女が相続人であれば、

父
→ 出生から死亡までの連続した戸籍

母・長男・長女
→ 父の死亡後に取得した現在戸籍など

という形で確認していきます。

なお、同じ戸籍によって必要な事項を確認できる場合には、同じ内容の戸籍を何通も重複して取得する必要はありません。

5.兄弟姉妹が相続人になると、なぜ戸籍が一気に増えるの?

戸籍集めが特に複雑になりやすいのが、兄弟姉妹が相続人になるケースです。

例えば、

「亡くなった叔父には妻がいるが、子どもはいない。両親もすでに亡くなっている」

という場合を考えてみましょう。

子がいないことを確認しただけでは、すぐに兄弟姉妹が相続人になるわけではありません。

相続順位は、

  1. 子などの直系卑属
  2. 父母・祖父母などの直系尊属
  3. 兄弟姉妹

という順番です。

したがって、兄弟姉妹が相続人であることを確認するためには、

「被相続人に子がいない」

だけでなく、

「先順位となる直系尊属もすでに死亡している」

ことを確認する必要があります。

さらに、兄弟姉妹を漏れなく確定するため、被相続人の父母についても出生から死亡までの戸籍を確認する必要が生じることがあります。

法務局の案内でも、兄弟姉妹が相続人となる場合には、被相続人の父母の出生時から死亡時までの戸籍・除籍謄本が必要になるケースが示されています。

そのため、

「親の相続では戸籍が5通だったのに、叔父の相続では何十通にもなった」

ということも珍しくありません。

6.兄弟姉妹が先に亡くなっていたら?

被相続人の兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その兄弟姉妹の子、つまり被相続人から見た甥・姪が代襲相続人になることがあります。

この場合には、

  • 兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていること
  • その兄弟姉妹の子が誰なのか

についても戸籍で確認します。

相続関係が一世代増えるため、必要になる戸籍もさらに増えていきます。

なお、兄弟姉妹についての代襲相続は、原則として甥・姪までです。

誰が相続人なのかを先に整理してから戸籍を集めることが、無駄な取得を減らすポイントです。

7.昔の戸籍が読みにくいのはなぜ?

古い改製原戸籍や除籍を見ると、

「字が手書きで読めない」

「昔の漢字が使われている」

「家督相続、隠居など、現在では聞かない言葉が出てくる」

ということがあります。

古い相続が未登記のまま残っている場合には、現在の民法だけでなく、相続が発生した当時の法律によって相続関係を判断しなければならないケースもあります。

単に戸籍を集めるだけではなく、その戸籍から相続関係を読み取る作業が必要になります。

何代にもわたって相続登記がされていない不動産では、ここが特に複雑になります。

8.戸籍は本籍地の役所まで取りに行かないといけない?

以前は、戸籍を取得するために、それぞれの本籍地の市区町村へ請求する必要がありました。

しかし、2024年3月1日から戸籍証明書等の広域交付制度が始まっています。

一定の戸籍については、本籍地以外の市区町村窓口でもまとめて請求できるようになりました。

例えば、本籍が過去に一宮市、岐阜市、名古屋市と移っていた場合でも、対象となる戸籍であれば、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できる場合があります。

ただし、広域交付には対象となる戸籍や請求できる人などに条件があります。

すべての戸籍をどこでも取得できるわけではないため、利用する場合には市区町村へ確認しておくと安心です。

9.「法定相続情報一覧図」を作ると戸籍は不要になる?

法定相続情報証明制度を利用すると、法務局が戸籍の内容を確認したうえで、法定相続関係を一覧にした「法定相続情報一覧図の写し」を無料で交付してくれます。

この一覧図は、

  • 相続登記
  • 預貯金の相続手続
  • 相続税の申告
  • その他対応している相続手続

などで利用できます。

そのため、銀行Aへ戸籍一式を提出し、返却されたら銀行Bへ提出し、さらに証券会社へ提出する……という負担を減らせます。

ただし、ここで誤解しやすい点があります。

法定相続情報一覧図を最初に作る段階では、原則として戸籍を集める必要があります。

法務局は、提出された戸籍・除籍謄本等に基づいて相続関係を確認したうえで一覧図を認証するからです。

つまり、

「法定相続情報一覧図を作れば、最初から戸籍を集めなくてよい」

という制度ではありません。

一度作成しておけば、その後の複数の相続手続を進めやすくする制度と考えると分かりやすいでしょう。

10.戸籍を集める前に「相続関係」を整理するのが近道です

相続登記で必要な戸籍は、すべての相続で同じではありません。

例えば、

配偶者と子が相続人
→ 比較的整理しやすい

子が先に亡くなり孫が代襲相続
→ 子についての戸籍も必要

子がおらず親が相続人
→ 直系尊属の確認が必要

子も親もおらず兄弟姉妹が相続人
→ 父母の戸籍まで広く確認する必要がある

兄弟姉妹も先に亡くなっている
→ 甥・姪まで確認する必要がある

というように、相続関係によって必要書類が変わります。

ですから、やみくもに戸籍を集めるよりも、

「誰が亡くなり、誰が相続人になる可能性があるのか」

を最初に整理することが大切です。

まとめ

相続登記では、原則として被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を確認します。

これは単に死亡の事実を証明するためではありません。

法定相続人を一人残らず確定するためです。

特に、

  • 転籍が多い
  • 結婚・離婚歴がある
  • 養子縁組がある
  • 代襲相続が発生している
  • 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる
  • 何代も相続登記をしていない

といったケースでは、必要な戸籍が多くなります。

「戸籍が何通必要か」を先に考えるのではなく、出生から死亡までの身分関係と、法定相続人全員を確認できているかという視点で考えることがポイントです。

大志法務事務所では、相続登記のご依頼をいただいた場合、必要な戸籍の収集や相続関係の確認、法定相続情報一覧図の作成を含めて手続を進めることができます。

「古い戸籍が読めない」

「兄弟姉妹が多く、誰まで戸籍が必要か分からない」

「何代も前の名義のままになっている」

という場合も、まず現在分かっている相続関係から整理していきましょう。

参考情報

法務省「相続登記の申請義務化特設ページ・登記手続ハンドブック」
相続登記に必要な戸籍の考え方を確認する

法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」
法定相続情報一覧図の必要書類を確認する

法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
戸籍証明書等の広域交付制度を確認する

※制度内容は2026年10月1日時点の公表情報に基づいています。