亡くなった父の登記簿上の住所が昔のまま!相続登記はできる?
住民票の除票・戸籍の附票で住所がつながらない場合の対処法を解説します
「父が亡くなったので、実家の相続登記をしようと思います」
「ところが、登記簿を確認したら、父の住所が30年以上前の住所になっていました」
「亡くなったときの住所と違うのですが、このまま相続登記はできるのでしょうか?」
不動産の登記簿に記載されている住所が、現在の住所や亡くなったときの住所と異なっていることは珍しくありません。
特に、何十年も前に購入した土地や、祖父母の代から名義を変更していない不動産では、古い住所がそのまま残っている場合があります。
ここで問題になるのが、登記簿に記載されている所有者と、亡くなった方が同一人物であることを、どのように証明するかという点です。
今回は、相続登記で必要になる住所の証明と、古い記録が取得できない場合の対処法について解説します。
1.登記簿には、所有者の住所と氏名が記載されています
例えば、父Aが昭和60年に土地を購入したとします。
購入当時の住所は、
愛知県一宮市○○町1番地
でした。
その後、父Aは何度か引っ越しをして、亡くなったときには、
愛知県名古屋市○○区2番地
に住んでいました。
しかし、土地の登記簿には、購入当時の一宮市の住所が記載されたままでした。
この場合、登記簿上の所有者は、
「一宮市○○町1番地のA」
です。
一方、死亡の記載がある戸籍や最後の住民票で確認できるのは、名古屋市に住んでいたAです。
同じ氏名であっても、登記簿上のAと、亡くなったAが同一人物であることを確認する必要があります。
これが、相続登記で住所の証明が求められる理由です。
2.戸籍謄本だけでは、住所のつながりが分からないことがあります
相続登記では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めることが一般的です。
しかし、戸籍には、基本的に本籍や身分関係などが記載されており、過去の住所の履歴がすべて記載されているわけではありません。
例えば、
登記簿
→ 一宮市○○町1番地のA
戸籍
→ 本籍が岐阜県○○市のA
という状態では、住所と本籍が異なり、それだけで同一人物と確認することが難しい場合があります。
そこで必要になるのが、
- 住民票の除票
- 戸籍の附票
といった書類です。
これらは、登記簿上の住所と亡くなった方を結び付けるための重要な資料になります。
なお、被相続人の本籍と登記簿上の住所が一致する場合などには、別途の住所証明書を必要としない取扱いもあります。
すべての相続登記で必ず同じ書類が必要になるわけではありません。
3.「住民票の除票」とは何ですか?
住民票の除票とは、死亡や転出などによって住民票から除かれた方の記録です。
亡くなった方の住民票の除票は、通常、最後の住所地の市区町村で取得します。
例えば、父Aが名古屋市で亡くなった場合には、名古屋市で住民票の除票を請求します。
そこには、最後の住所や、一定の範囲で以前の住所などが記載されています。
相続登記に利用する場合には、本籍など、被相続人の同一性を確認するために必要な事項が記載されたものを取得することが重要です。
ただし、住民票の除票には、必ずしもすべての過去の住所が記載されているわけではありません。
何度も転居している場合には、登記簿上の古い住所まで確認できないことがあります。
4.「戸籍の附票」とは何ですか?
戸籍の附票は、本籍地の市区町村で管理されている住所の記録です。
戸籍に在籍していた期間中の住所の履歴を確認することができます。
例えば、父Aが同じ本籍のまま、
一宮市
↓
岐阜市
↓
名古屋市
と引っ越していた場合、その住所の変遷が戸籍の附票で確認できることがあります。
住民票の除票では一つ前の住所までしか確認できなくても、戸籍の附票なら、さらに古い住所を確認できる場合があります。
ただし、戸籍の附票も万能ではありません。
途中で転籍している場合や、戸籍の改製が行われている場合には、現在の戸籍の附票だけでは古い住所まで確認できないことがあります。
そのような場合には、以前の本籍地の記録も調べる必要があります。
また、現在の戸籍の附票は、本籍や筆頭者が省略されることがあります。
相続登記で使用する場合には、必要に応じて本籍・筆頭者の記載を指定して請求することが大切です。
5.住所が何度も変わっている場合はどうする?
例えば、登記簿上の住所がA市、死亡時の住所がD市で、その間にB市とC市へ引っ越していたとします。
登記簿上の住所:A市
↓
転居:B市
↓
転居:C市
↓
死亡時の住所:D市
この場合、住所の履歴を確認できる書類を集め、登記簿上の所有者と被相続人が同一人物であることを示します。
戸籍の附票でA市からD市までの住所が確認できれば、比較的整理しやすいケースです。
一方、途中で本籍を移していた場合などには、複数の戸籍の附票や住民票の除票を組み合わせて確認することがあります。
大切なのは、登記簿上の住所がどこに記録されているかという点です。
単に最後の住所が分かるだけでは、同一性を十分に証明できない場合があります。
6.古い住民票の除票や戸籍の附票が取得できないこともあります
相続登記で困るのが、役所へ行っても、
「その記録は残っていません」
と言われるケースです。
住民票の除票や戸籍の附票には保存に関する制度があります。
現在は保存期間が延長されていますが、以前の制度の下で既に廃棄された記録が復活するわけではありません。
そのため、何十年も前の住所を確認しようとしても、当時の記録が取得できない場合があります。
例えば、
「昭和50年代の住所が登記簿に残っている」
「父はその後、何度も引っ越している」
「昔の戸籍の附票は既に廃棄されている」
という場合です。
では、住所の履歴を証明する書類が取得できなければ、相続登記は諦めるしかないのでしょうか。
そうではありません。
別の資料を調査し、登記簿上の所有者と被相続人が同一人物であることを確認できるか検討します。
7.住所がつながらない場合、どのような資料を調べる?
住民票の除票や戸籍の附票だけでは住所のつながりを確認できない場合、事情に応じて別の資料を調査します。
例えば、次のような資料です。
① 登記済証(いわゆる権利証)
亡くなった方が不動産を取得した際の登記済証が残っていれば、同一性を裏付ける資料として利用できる場合があります。
② 固定資産税に関する資料
固定資産税の納税通知書などから、亡くなった方と対象不動産との関係を確認できる場合があります。
③ 不在住証明書・不在籍証明書
登記簿上の住所について、該当する住民登録や本籍がないことを示す資料です。
これらの書類だけで同一人物であることが直接証明されるわけではありませんが、他の資料と組み合わせて検討することがあります。
④ 上申書
登記簿上の所有者と被相続人が同一人物であることについて、相続人が事情を説明する書面です。
必要に応じて、相続人の実印による押印や印鑑証明書などを求められる場合があります。
ただし、これらの資料を提出すれば必ず登記が認められるというわけではありません。
必要な資料は、個別の事情や法務局の判断によって異なります。
公的な住所証明書が取得できない場合には、資料を整理したうえで、管轄法務局への事前確認を検討することが重要です。
8.亡くなった父の住所変更登記を先にする必要はある?
ここで、よくある質問があります。
「登記簿上の住所が昔のままなら、まず父の住所変更登記をして、それから相続登記をするのでしょうか?」
実は、相続登記の前に、亡くなった方の住所変更登記を必ず行わなければならないわけではありません。
相続登記では、登記簿上の所有者と亡くなった方が同一人物であることを必要な資料によって確認できれば、住所変更登記を経ずに相続登記を申請できるのが通常です。
例えば、
登記簿上の父の住所:一宮市
↓
死亡時の父の住所:名古屋市
↓
父と登記名義人が同一人物であることを証明
↓
相続人への相続登記
という流れです。
ただし、これは住所の証明が不要という意味ではありません。
「住所変更登記が不要なこと」と「住所のつながりを証明しなくてよいこと」は別です。
この違いを理解しておくことが大切です。
9.2026年からの住所変更登記の義務化とは別の問題です
2026年4月1日から、不動産の所有者の住所・氏名変更登記が義務化されました。
住所や氏名などに変更があった場合、原則として変更日から2年以内に変更登記を申請する制度です。
しかし、今回のように、既に亡くなっている登記名義人から相続人へ名義を移す場合には、相続登記のための同一性確認と、住所変更登記の義務化を区別して考える必要があります。
「住所変更登記が義務化されたのだから、亡くなった父の住所変更登記を必ず先に申請する」
というわけではありません。
一方、相続登記を終えて新たに所有者となった相続人が、その後に転居した場合には、住所変更登記の義務が問題になります。
登記の目的と所有者の状況によって、必要な手続が異なるのです。
10.登記簿上の住所が違うと、相続登記の費用は高くなる?
住所の履歴を簡単に証明できる場合と、何十年も前の記録を調査する場合とでは、必要な作業が異なります。
例えば、
比較的簡単なケース
- 登記簿上の住所と死亡時の住所が一致している
- 住民票の除票で住所のつながりが確認できる
- 戸籍の附票で過去の住所が確認できる
調査が必要なケース
- 何度も転居している
- 過去に何度も転籍している
- 住民票の除票が取得できない
- 古い戸籍の附票が廃棄されている
- 権利証も残っていない
- 住所だけでなく氏名も変更されている
後者の場合には、追加の証明書の取得費用や調査の手間が生じることがあります。
ただし、住所のつながりが複雑だからといって、相続登記の登録免許税が当然に高くなるわけではありません。
登録免許税と、書類の取得費用や司法書士の調査・申請報酬は区別して考える必要があります。
11.古い相続登記ほど、早めの確認が大切です
例えば、祖父が昭和60年に亡くなったものの、現在も祖父名義の土地が残っている場合です。
その土地を孫の名義にしようとすると、
- 祖父の相続人は誰だったのか
- その後に亡くなった相続人はいないか
- 現在の相続人は何人いるのか
- 登記簿上の祖父の住所はどこか
- 祖父の住所を証明する記録は残っているか
といった点を確認する必要があります。
相続が何代にもわたって重なっている場合には、相続関係の調査だけでなく、古い登記名義人の同一性確認も難しくなることがあります。
さらに、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。
それ以前に発生した相続についても対象となり、2027年3月31日が申請期限となる場合があります。
「古い住所の証明書が取れないから、相続登記はできない」
と決めつけず、まずは必要な資料を確認することが大切です。
12.相続登記を依頼する前に確認しておきたいこと
亡くなった方の登記簿上の住所が古い場合には、次の点を確認しておくと手続を進めやすくなります。
① 登記事項証明書を取得する
まず、不動産の登記簿上の所有者と住所を確認します。
② 亡くなった方の最後の住所を確認する
死亡時の住民票の除票などで確認します。
③ 戸籍の附票を取得する
登記簿上の住所が記載されているか確認します。
④ 過去の転居や転籍を確認する
必要に応じて、以前の住所地や本籍地の記録を調べます。
⑤ 権利証などが残っていないか探す
古い登記済証や固定資産税関係の書類が、後の調査で役立つ場合があります。
⑥ 書類が取得できない場合は、その事情を整理する
役所で取得できなかった書類や、調査した内容を記録しておくと、追加資料の検討に役立ちます。
特に、権利証などの古い資料は、相続登記が終わるまで安易に処分しないようにしましょう。
まとめ
亡くなった方の登記簿上の住所が、死亡時の住所と違っていても、相続登記ができなくなるわけではありません。
重要なのは、登記簿上の所有者と、亡くなった方が同一人物であることを確認できるかという点です。
通常は、
住民票の除票
↓
戸籍の附票
↓
必要に応じて過去の住所・本籍の記録を調査
という順番で確認します。
古い記録が廃棄されている場合でも、登記済証やその他の資料によって同一性を確認できる可能性があります。
また、亡くなった方の登記簿上の住所が古いからといって、必ず住所変更登記を先に行う必要があるわけではありません。
大志法務事務所では、相続登記に必要な戸籍の収集だけでなく、登記名義人の住所のつながりや同一性の確認、古い相続関係の調査、必要な登記手続まで対応しています。
「父の登記簿上の住所が昔のままになっている」
「住民票の除票が廃棄されていると言われた」
「祖父名義の土地が残っているが、昔の住所が分からない」
という場合には、取得できる書類と残っている資料を確認するところからご相談ください。
参考情報
※制度内容は2026年10月10日時点の公表情報に基づいています。必要書類や同一性の証明方法は、個別の事情によって異なります。
