今も「有限会社」と名乗っている会社はどういう会社?
新しく有限会社は作れません。「特例有限会社」と株式会社の違いを解説します
街を歩いていると、
「○○有限会社」
という会社を今でも見かけます。
一方で、
「今は有限会社を作れないと聞いたことがある」
という方も多いのではないでしょうか。
では、現在も存在している有限会社は、法律上どのような会社なのでしょうか。
「そのまま有限会社を続けて大丈夫?」
「株式会社に変更しなければならない?」
「役員変更の登記は何年ごとに必要?」
「長期間登記をしていないと、みなし解散になる?」
実は、現在の有限会社には、通常の株式会社とは異なる重要な特徴があります。
今回は、現在も「有限会社」と名乗っている会社の正体である「特例有限会社」について整理します。
1.現在、新しく有限会社を設立することはできません
かつて日本には、株式会社とは別に「有限会社」という会社制度がありました。
しかし、2006年5月1日に会社法が施行されたことに伴い、有限会社法は廃止されました。
そのため、現在、新しく、
「○○有限会社」
という会社を設立することはできません。
現在、新たに会社を設立する場合には、株式会社や合同会社などから会社形態を選ぶことになります。
では、2006年より前から存在していた有限会社は、すべて株式会社へ変更しなければならなかったのでしょうか。
そうではありません。
2.昔からある有限会社は「特例有限会社」として残っています
会社法が施行された時点で存在していた有限会社は、法律上、株式会社として存続することになりました。
この会社を「特例有限会社」といいます。
少し分かりにくいのですが、
会社名
→ ○○有限会社
法律上の位置付け
→ 株式会社の一種である「特例有限会社」
という状態です。
つまり、現在「有限会社」と名乗っている会社が違法なわけでも、古い登記を放置しているわけでもありません。
法律によって認められた会社形態として、現在もそのまま存続できます。
3.「有限会社」という名前は、いつまで使える?
「会社法ができてから20年もたつのだから、そろそろ株式会社に変更しなければならないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、特例有限会社について、
「○年までに株式会社へ変更しなければならない」
という期限はありません。
そのため、特例有限会社のまま事業を続けることができます。
むしろ特例有限会社は、商号の中に「有限会社」という文字を使用することになっています。
したがって、
「有限会社という名前が古いから」
という理由だけで、急いで株式会社へ移行する必要はありません。
会社の事業内容、取引先、将来の事業承継、組織体制などを考えて判断することになります。
4.特例有限会社の大きな特徴は「役員の任期」です
通常の株式会社では、取締役には任期があります。
原則として取締役は2年ですが、株式の譲渡制限を設けている一定の株式会社では、定款によって最長10年まで伸長することができます。
任期が満了したときには、同じ人が引き続き取締役を続ける場合でも、株主総会で改めて選任し、重任登記を行う必要があります。
一方、特例有限会社については、会社法の取締役・監査役の任期に関する規定が適用されません。
そのため、定款で特別に任期を定めている場合などを除き、役員について通常の株式会社のような法定の任期満了はありません。
例えば、
「20年前から同じ人が取締役をしている」
という場合でも、それだけを理由として2年や10年ごとに重任登記をする必要はありません。
これは通常の株式会社との大きな違いです。
5.任期がないから「役員変更登記は不要」ではありません
ここは注意が必要です。
役員に通常の株式会社のような法定任期がないことと、役員に関する登記をしなくてよいことは別です。
例えば、
- 取締役が辞任した
- 取締役が死亡した
- 新しい取締役を選任した
- 取締役の氏名が変わった
- 登記事項となっている住所が変わった
といった場合には、必要な変更登記を検討しなければなりません。
特例有限会社では定期的な役員改選がないため、逆に、
「何十年も登記簿を確認していない」
という会社もあります。
その間に役員が転居していたり、すでに亡くなっていたりすることもあります。
「有限会社だから役員登記は何もしなくてよい」と考えるのは危険です。
6.特例有限会社は「12年間登記をしないとみなし解散」の対象?
第58回のコラムでは、株式会社について、最後の登記から12年を経過すると「休眠会社」として、一定の手続をしなければみなし解散となる制度をご紹介しました。
では、特例有限会社も12年間登記をしていないと、みなし解散になるのでしょうか。
特例有限会社は、この休眠会社のみなし解散制度の対象には含まれていません。
法務省も、休眠会社を、
「最後の登記から12年を経過している株式会社(特例有限会社は含まれません)」
と明確に案内しています。
特例有限会社には通常の株式会社のような法定の役員任期がなく、長期間、登記事項に変更が生じないことがあり得るためです。
したがって、
「有限会社で15年間登記をしていないから、自動的に解散している」
とは限りません。
ただし、実際に登記事項に変更があったにもかかわらず必要な変更登記をしていないのであれば、別の問題です。
長期間登記をしていない特例有限会社では、一度現在の登記内容と実態が一致しているか確認することをおすすめします。
7.有限会社から株式会社へ変更することはできます
特例有限会社は、そのまま存続することもできますが、希望すれば通常の株式会社へ移行することもできます。
一般的には、株主総会で、
「○○有限会社」
から
「○○株式会社」
へ商号を変更する定款変更の決議を行います。
ただし、登記手続としては単純な「商号変更登記」だけではありません。
法律上は、
特例有限会社についての解散の登記
と
商号変更後の株式会社についての設立の登記
を同時に申請するという、特別な方法が採られています。
法務局でも、
「特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記申請書」
という専用の申請様式が用意されています。
8.株式会社へ移行するときは、役員の任期に注意
特例有限会社から通常の株式会社へ移行するときに、特に注意したいのが役員の任期です。
特例有限会社の間は法定の任期制限が適用されていなかった役員にも、通常の株式会社へ移行すると、会社法上の任期に関する規定が適用されます。
しかも、
「株式会社になった日から新しく任期が始まる」
と単純に考えることはできません。
法務省は、移行前から在任している役員について、その任期は有限会社または特例有限会社で選任された日から起算すると案内しています。
そのため、長期間在任している取締役については、株式会社への移行と同時に任期満了となる場合があります。
例えば、
「有限会社で20年間、同じ取締役が在任している」
という会社が株式会社へ移行する場合には、現在の役員構成や選任時期を確認したうえで、新しい株式会社の役員をどうするか検討する必要があります。
9.「株式会社にした方が信用が高い」とは一概にいえません
有限会社から株式会社への変更を検討する理由として、
「株式会社の方が対外的なイメージがよいのではないか」
という話を聞くことがあります。
確かに、
- 新規取引先への印象
- 採用活動
- 将来の事業拡大
- 役員構成の変更
- 事業承継
- 金融機関や取引先との関係
などから株式会社への移行を検討する会社はあります。
一方で、特例有限会社には、
通常の株式会社のような法定の役員任期がない
という特徴があります。
同族経営で役員構成がほとんど変わらない会社では、定期的な重任登記が原則不要であることは一つの利点とも考えられます。
単に、
「有限会社は古いから株式会社にした方がよい」
と決めるのではなく、会社の将来像を踏まえて判断することが大切です。
10.株式会社へ移行すると「元の有限会社」へ戻ることはできません
ここも重要です。
特例有限会社が通常の株式会社へ移行すると、その後、
「やはり有限会社に戻したい」
と思っても、新しく有限会社を作る制度自体がありません。
したがって、特例有限会社という地位に戻すことはできません。
「有限会社」という商号を長年使用してきた会社にとっては、
- 取引先に浸透した会社名
- 看板や印刷物
- ウェブサイト
- 銀行口座
- 契約書
- 許認可
- 役員任期
- 今後の事業承継
などにも影響します。
株式会社への移行は、単に会社名の「有限」を「株式」に変えるだけの手続ではありません。
11.古い有限会社ほど、一度登記簿と定款を確認しましょう
特例有限会社では役員の法定任期がないため、長年同じ登記内容のままという会社も珍しくありません。
しかし、長期間経過している会社では、
「定款がどこにあるか分からない」
「登記されている取締役の住所が昔のまま」
「すでに亡くなった役員が登記されたまま」
「現在の株主が誰なのか整理できていない」
「会社を子どもへ引き継ぎたいが、何から始めればよいか分からない」
といった問題が見つかることがあります。
特に事業承継を考える時期になったら、
登記事項証明書
↓
定款
↓
株主名簿
↓
現在の役員
↓
実際の株主構成
を一度確認しておくとよいでしょう。
まとめ
現在も「○○有限会社」と名乗っている会社は、法律上なくなった会社をそのまま放置しているわけではありません。
2006年5月1日の会社法施行時に存在していた有限会社は、現在、
「特例有限会社」
として存続しています。
法律上は株式会社の一種ですが、商号には引き続き「有限会社」という文字を使用します。
そして特例有限会社には、
通常の株式会社のような法定の役員任期がない
12年間登記がなくても休眠会社のみなし解散制度の対象にはならない
といった、通常の株式会社とは異なる特徴があります。
一方で、役員の辞任・死亡・就任や住所変更など、実際に登記事項に変更が生じた場合には必要な変更登記を行わなければなりません。
また、希望すれば通常の株式会社へ移行することもできますが、その場合には役員任期や会社の機関設計なども含めて確認する必要があります。
大志法務事務所では、
現在の登記内容の確認
↓
定款・株主構成の確認
↓
必要な役員変更登記
↓
特例有限会社のまま継続するか、株式会社へ移行するかの整理
↓
株式会社への移行登記
まで、会社の状況に応じて手続を整理することができます。
「有限会社の登記を何十年も確認していない」
「昔の定款しかない」
「株式会社へ変更した方がよいのか迷っている」
という場合には、一度会社の現在の状態を確認してみることをおすすめします。
参考情報
法務省「会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A」
特例有限会社の位置付けと株式会社への移行を確認する
法務省「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」
特例有限会社がみなし解散の対象外であることを確認する
法務局「商業・法人登記の申請書様式」
特例有限会社の各種申請書様式を確認する
法務局「商業・法人登記に関するよくあるご質問等」
通常の株式会社への移行手続を確認する
法務省「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」
特例有限会社に関する経過措置を確認する
※制度内容は2026年10月7日時点の公表情報に基づいています。
