会社の取締役が1人になったら、取締役会はどうなる?後任を選ぶか、取締役会を廃止するか
取締役が3人未満になった場合の対応と、定款変更・監査役・代表取締役の登記を解説します

「当社には取締役が3人いますが、そのうち2人が退任することになりました」

「今後は社長1人で会社を経営する予定です」

「取締役が1人になっても、今までどおり会社を続けられるのでしょうか?」

「取締役会や監査役はどうすればよいのでしょうか?」

このような相談を受けることがあります。

株式会社は、取締役が1人でも経営することができます。しかし、取締役会を設置している株式会社では、取締役が3人以上必要とされています。

そのため、取締役が3人から1人になる場合には、単に退任する取締役の変更登記を行うだけでは済まないことがあります。

今回は、取締役の人数が減った場合に必要な手続と、取締役会を廃止する場合の注意点について解説します。

1.株式会社の取締役は1人でも大丈夫?

株式会社には、1人以上の取締役を置く必要があります。そのため、取締役が1人だけの株式会社も認められています。

例えば、社長が1人で会社を経営している場合です。取締役を複数人置かなければならないとは限りません。

ただし、ここで注意したいのが、取締役会を設置している会社かどうかです。

取締役会を設置していない株式会社であれば、原則として取締役1人でも問題ありません。一方、取締役会設置会社では、会社法上、取締役が3人以上必要になります。

2.取締役会設置会社とは?

取締役会設置会社とは、会社の機関として取締役会を設置している株式会社です。

取締役会は、会社の業務執行に関する重要な意思決定を行い、取締役の職務執行を監督する機関です。取締役会設置会社では、原則として取締役会が代表取締役を選定します。

取締役会を設置しているかどうかは、会社の登記事項証明書で確認できます。

登記事項証明書に「取締役会設置会社に関する事項」として「取締役会設置会社」と記載されていれば、取締役会を設置している会社です。

会社法第331条第5項では、取締役会設置会社の取締役は3人以上でなければならないとされています。したがって、取締役会設置会社が取締役1人の体制を希望する場合には、会社の機関設計を見直す必要があります。

3.取締役が3人から2人になったら、取締役会は自動的になくなる?

取締役が3人から2人になったからといって、取締役会が自動的に廃止されるわけではありません。

取締役会は、定款に基づいて設置されている会社の機関です。そのため、取締役会を廃止するには、原則として株主総会で定款を変更し、必要な登記を行うことになります。

また、取締役の人数が法律や定款で定められた人数を下回る場合には、退任した取締役が新たな取締役の就任まで、引き続き取締役としての権利義務を有することがあります。

これを「権利義務取締役」といいます。したがって、取締役が辞任届を提出したからといって、必ずその時点ですべての職務から離れられるとは限りません。

権利義務取締役については、第50回のコラムでも解説しています。

4.取締役が1人になる場合、どんな選択肢がある?

取締役が3人から1人になる場合には、大きく分けて次の2つの方法が考えられます。

方法 内容
① 後任の取締役を選任する 取締役を3人以上確保し、取締役会を維持する
② 取締役会を廃止する 定款を変更し、取締役1人でも運営できる体制にする

例えば、今後も複数の役員によって経営上の意思決定を行いたい場合には、後任の取締役を選任する方法が考えられます。

一方、実際には社長1人で経営しており、他の取締役を置く必要性が低い場合には、取締役会を廃止する方法もあります。

ただし、取締役会を廃止できるかどうかは、会社の株式の譲渡制限や他の機関の設置状況などによって異なります。

5.どんな会社でも取締役会を廃止できる?

すべての株式会社が、自由に取締役会を廃止できるわけではありません。

会社法上、公開会社など、取締役会を設置しなければならない株式会社があります。

ここでいう公開会社とは、株式を証券取引所に上場している会社だけを意味するものではありません。

会社法では、発行する株式の全部について譲渡制限が設けられているかどうかなどによって、公開会社に該当するかを判断します。

そのため、非上場の中小企業であっても、会社法上の公開会社に該当する場合があります。

取締役会を廃止する際には、まず定款を確認し、取締役会の設置義務がある会社ではないかを調べる必要があります。

6.取締役会を廃止するには、株主総会の決議が必要?

取締役会を廃止するには、原則として定款変更が必要です。定款変更は、通常、株主総会の特別決議によって行います。

例えば、定款に次のような規定がある場合です。

「当会社は、取締役会を置く。」

取締役会を廃止する場合には、この規定を削除します。また、取締役会の廃止に伴い、定款の他の規定も見直す必要があります。

例えば、株式の譲渡承認機関を取締役会としている場合です。取締役会を廃止するのであれば、譲渡承認機関を株主総会などに変更する必要があります。

取締役会の規定だけを削除すれば、すべての手続が完了するわけではありません。

7.取締役会を廃止したら、監査役も辞めなければならない?

取締役会設置会社では、原則として監査役の設置が必要です。ただし、会社の機関設計によって例外があります。

一方、取締役会を設置していない株式会社では、一定の場合を除き、監査役を置かないこともできます。

そのため、取締役会を廃止する際には、監査役を引き続き置くかどうかを検討します。

例えば、取締役3人、監査役1人の株式会社が、取締役1人の会社に変更する場合です。

このとき、取締役会だけを廃止して監査役を残す方法も考えられます。また、法律上認められる会社であれば、取締役会と監査役の両方を廃止することも考えられます。

ただし、監査役を廃止する場合には、監査役の任期や退任の取扱い、定款変更、必要な登記などを確認しなければなりません。

特に、監査役の設置に関する定款の定めを廃止すると、その定款変更の効力発生時に監査役の任期が満了する場合があります。

8.取締役会を廃止すると、代表取締役はどうなる?

取締役会を廃止する場合には、代表取締役の取扱いにも注意が必要です。

取締役会設置会社では、原則として取締役会が代表取締役を選定します。

一方、取締役会を設置していない株式会社では、原則として各取締役が会社を代表します。

ただし、定款の定めや株主総会の決議など、法律上認められた方法によって代表取締役を定めることもできます。

例えば、取締役会を廃止した後、取締役が社長1人だけになる場合です。この場合、原則として、その取締役が会社を代表することになります。

一方、取締役が2人以上残る場合には、代表権を誰に持たせるのか検討する必要があります。

取締役会を廃止するときには、取締役の人数だけでなく、代表取締役の選定方法も確認することが重要です。

9.取締役会を廃止すると、会社の運営はどう変わる?

取締役会を廃止すると、会社の意思決定の仕組みが変わります。

例えば、取締役会設置会社では、会社法や定款に基づいて、取締役会で決定する事項があります。

一方、取締役会を設置していない会社では、株主総会の権限が広くなります。

また、取締役が複数いる場合には、定款に別段の定めがない限り、業務執行の決定について取締役の過半数による決定が必要となる場合があります。

取締役が1人だけであれば、日常の経営判断を比較的簡潔な体制で行うことができます。

ただし、会社の重要事項について株主総会の決議が必要になることは変わりません。会社の規模や経営方針に合わせて、適切な機関設計を選ぶことが大切です。

10.取締役会を廃止する場合、どんな登記が必要?

取締役会を廃止する場合には、会社の状況に応じて、複数の変更登記が必要になることがあります。

例えば、次のような登記です。

  • 取締役会設置会社の定めの廃止
  • 取締役の退任
  • 監査役設置会社の定めの廃止(監査役も廃止する場合)
  • 監査役の退任(必要な場合)
  • 代表取締役に関する変更登記(変更が生じる場合)

また、株式の譲渡制限に関する規定の変更が必要になる場合には、その内容に応じた登記も検討します。

必要な登記は、現在の定款や登記事項、変更後の機関設計によって異なります。

そのため、単に「取締役会を廃止する登記」だけを申請すればよいとは限りません。

11.取締役会を廃止する登記は、いつまでに申請する?

株式会社の登記事項に変更が生じた場合には、原則として、本店所在地において変更が生じた日から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。

取締役会の廃止についても、定款変更の効力発生日などを確認し、期限内に登記を申請する必要があります。

また、取締役や監査役の退任、代表取締役の変更などがある場合には、それぞれの変更日を確認することが重要です。

登記申請を長期間放置すると、過料の対象となる可能性があります。

株主総会を開催する前に、必要な決議事項や登記手続を整理しておくことをおすすめします。

12.取締役会を廃止する前に確認したいこと

取締役会の廃止を検討する際には、次の点を確認しましょう。

① 現在の登記事項証明書を確認する

取締役会設置会社かどうか、監査役などの機関が設置されているかを確認します。

② 定款を確認する

取締役の人数、取締役会、監査役、株式の譲渡制限などの規定を確認します。

③ 取締役会を廃止できる会社か確認する

公開会社など、法律上、取締役会の設置が必要な会社ではないかを確認します。

④ 監査役を残すかどうか検討する

取締役会の廃止にあわせて、監査役の設置についても見直します。

⑤ 代表取締役の取扱いを確認する

取締役会廃止後の代表権の所在や、代表取締役の選定方法を確認します。

⑥ 株主総会の決議と登記を準備する

必要な定款変更や役員変更を整理し、登記申請までの手続を進めます。

まとめ

株式会社は、取締役が1人でも経営することができます。しかし、取締役会設置会社では、取締役が3人以上必要です。

そのため、取締役が3人から1人になる場合には、後任の取締役を選任して取締役会を維持するか、取締役会を廃止して会社の機関設計を変更するかを検討する必要があります。

特に重要なのは、次の点です。

① 取締役会設置会社では、取締役が3人以上必要であること

② 取締役が3人未満になっても、取締役会が自動的に廃止されるわけではないこと

③ 取締役会の廃止には、原則として株主総会の特別決議による定款変更が必要であること

④ 監査役や代表取締役の取扱いも、あわせて確認する必要があること

⑤ 取締役会の廃止に伴い、複数の変更登記が必要になる場合があること

大志法務事務所では、株式会社の役員変更登記、取締役会設置会社の定めの廃止、監査役設置会社の定めの廃止、定款変更に伴う登記などに対応しています。

「取締役が退任するため、役員が1人になる」

「取締役会を廃止して、会社の運営を簡素化したい」

「監査役も廃止できるか相談したい」

という場合には、お気軽にご相談ください。

会社の役員構成を見直すときには、単に人数を減らすだけでなく、定款や登記もあわせて確認することが大切です。

参考情報

※本記事は2026年10月24日時点の法令等に基づく一般的な解説です。取締役会の廃止の可否、定款変更の内容、役員の退任や代表取締役の取扱いは、会社の機関設計や個別の事情によって異なります。