合同会社の社員が亡くなったらどうなる?相続人はそのまま社員になれる?
定款の「相続承継」の定めと、社員死亡後に必要な登記・事業承継を解説します

「夫婦2人で合同会社を経営しています」

「もし代表社員である夫が亡くなった場合、妻がそのまま会社を引き継げるのでしょうか?」

「子どもが会社の持分を相続すれば、そのまま社員になるのでしょうか?」

株式会社の場合、株主が亡くなると、その株式は相続財産となります。しかし、合同会社では少し事情が異なります。

合同会社の「社員」は、一般に使われる従業員という意味ではありません。合同会社に出資し、その構成員となっている人のことをいいます。

そして、合同会社では、社員が死亡すると原則としてその社員は退社することになります。相続人がいるからといって、当然にその人が社員の地位を引き継ぐわけではありません。

ただし、定款に「社員が死亡した場合には、その相続人が持分を承継する」という定めを設けている場合には、相続人が社員となることができます。

今回は、合同会社の社員が死亡した場合の持分の取扱い、定款の重要性、代表社員が死亡した場合の登記手続について解説します。

1.合同会社の「社員」とは?

合同会社における「社員」とは、会社に雇用されている従業員のことではありません。合同会社に出資し、会社を構成するメンバーのことをいいます。

株式会社でいう「株主」に近い立場ですが、制度は同じではありません。

合同会社では、原則として社員自身が会社の業務を執行します。また、定款によって特定の社員だけを「業務執行社員」とすることもできます。さらに、業務執行社員の中から「代表社員」を定めることがあります。

そのため、合同会社では、社員・業務執行社員・代表社員という立場を区別して考える必要があります。

2.合同会社の社員が死亡するとどうなる?

会社法では、持分会社の社員が死亡した場合、原則としてその社員は退社するとされています。合同会社も持分会社の一つです。

したがって、合同会社の社員が亡くなると、原則として死亡した時点でその人は会社を退社することになります。

例えば、AさんとBさんの2人で合同会社を経営していた場合です。Aさんが亡くなった場合、何も特別な定めがなければ、Aさんは死亡により退社します。

「相続人であるAさんの妻が、自動的にAさんの代わりの社員になる」という仕組みではありません。ここは株式会社の株式相続と大きく異なる点です。

3.相続人は合同会社の社員になれない?

必ずしもそうではありません。会社法608条では、社員が死亡した場合に、その相続人が社員の持分を承継する旨を定款で定めることができるとされています。

例えば、定款に「社員が死亡した場合、その相続人は当該社員の持分を承継する」といった趣旨の定めがある場合です。

このような定款の定めがあれば、相続人が死亡した社員の持分を承継し、社員となることができます。

逆に言えば、定款に相続承継の定めがなければ、相続人が当然に社員になるわけではありません。

合同会社の事業承継を考えるうえで、定款の内容は非常に重要です。

4.まず最初に定款を確認する

合同会社の社員が亡くなった場合、最初に確認すべきものの一つが定款です。特に確認したいのが、「社員の相続及び合併」などと記載された条項です。

会社によっては「社員が死亡した場合には、その相続人が持分を承継して社員となる」と定めている場合があります。一方、このような条項を全く設けていない会社もあります。

設立時にインターネット上のひな型を利用して定款を作成し、その後一度も見直していない会社では、実際の事業承継の希望と定款の内容が合っていないこともあります。

5.定款に相続承継の定めがない場合、持分はどうなる?

社員が死亡によって退社した場合には、原則として退社した社員の持分について払戻しの問題が生じます。

つまり、相続人がそのまま会社の社員になるのではなく、死亡した社員が会社に対して有していた財産的な権利を相続するという形になります。

具体的な払戻額については、会社の財産状況などを踏まえて検討することになります。

したがって「父が合同会社の持分を50%持っていたから、子どもがその50%をそのまま引き継ぐ」とは限りません。

株式会社の株式と、合同会社の持分は、同じように考えないことが重要です。

6.代表社員が亡くなった場合はどうなる?

実務上、特に注意が必要なのが代表社員の死亡です。

例えば、社員A・社員Bの2人がいて、Aさんが代表社員である合同会社を考えます。Aさんが死亡すると、原則として社員として退社すると同時に、代表社員としての地位も失います。

そのため、会社に他の社員が残っている場合には、新たな代表社員を定める必要があるかどうかを確認します。代表社員の選定方法は、定款の内容によって異なります。

死亡した代表社員の変更登記や、新たな代表社員に関する登記が必要になる場合があります。

7.社員が1人しかいない合同会社で、その社員が亡くなったら?

これは非常に重要なケースです。例えば、Aさん1人だけが社員であり、Aさん自身が代表社員でもある合同会社です。

このAさんが亡くなった場合、定款に相続承継の定めがあるかどうかによって、その後の会社の取扱いに大きな違いが生じます。

相続人が持分を承継して社員となれる定款になっていれば、相続人による事業承継を進められる可能性があります。

一方、相続承継の定めがなく、社員が誰もいなくなる場合には、会社の解散事由に該当するため、解散・清算などの対応を検討しなければなりません。

特に、一人合同会社を経営している方は、「自分が亡くなったあと、誰に事業を引き継いでもらうのか」という視点で、あらかじめ定款を確認しておくことが大切です。

8.夫婦で合同会社を経営している場合は?

例えば、夫婦2人が社員となって合同会社を経営しているケースです。夫が代表社員、妻も社員という場合に夫が亡くなったとします。

定款に相続承継の定めがなければ、夫は死亡により退社し、妻が残ることになります。妻がもともと社員であれば、会社そのものが直ちになくなるわけではありません。

ただし、代表社員をどうするか、夫の持分をどう処理するか、相続人への持分払戻しをどうするか、定款を変更する必要があるかなどを確認する必要があります。

一方、夫しか社員でなく、妻は単に従業員として働いていただけという場合には状況が異なります。家族で会社を運営しているからといって、家族全員が法律上の「社員」であるとは限りません。

9.相続人が複数いる場合はどうなる?

定款に相続承継の定めがあり、亡くなった社員に複数の相続人がいる場合には、さらに注意が必要です。

例えば、亡くなった社員に配偶者・長男・長女の3人の相続人がいる場合です。

相続による持分の承継については、定款の内容や相続の状況を確認したうえで処理する必要があります。

単に「長男が会社を継ぐ予定だから、長男だけを社員にすればよい」と簡単に判断できるとは限りません。

相続関係を確認し、必要に応じて遺産分割との関係も整理する必要があります。

10.死亡した社員が登記されていない場合もある?

合同会社では、すべての社員の氏名が登記事項になるわけではありません。

合同会社の主な登記事項には、業務執行社員の氏名または名称、代表社員の氏名または名称および住所などがあります。

そのため、死亡した社員が業務執行社員ではなかった場合などには、登記簿にその社員の氏名が記載されていないこともあります。

しかし、登記されていないからといって、社員死亡に関する会社内部の手続が不要になるわけではありません。定款や社員構成を確認し、必要な変更を整理します。

11.代表社員が死亡した場合、登記はいつまで?

代表社員や業務執行社員について登記事項に変更が生じた場合には、原則として変更登記が必要です。

合同会社についても、登記事項に変更が生じた場合には、原則として変更が生じた日から2週間以内に本店所在地で登記申請を行う必要があります。

代表社員が死亡したにもかかわらず、長期間そのままにしてしまうと、会社の印鑑証明書の取得、銀行手続、契約などに支障が生じる可能性があります。

特に代表社員が亡くなった場合には、「相続手続が落ち着いてから会社のことを考えればいい」と後回しにしない方がよいでしょう。

会社の事業を継続するため、早めに定款と登記事項証明書を確認することが重要です。

12.今のうちに定款を見直した方がよい会社は?

① 社員が1人だけの会社

その社員が死亡したときの事業承継を考えておく必要があります。

② 夫婦や親子で経営している会社

誰が法律上の社員なのかを確認しておきましょう。

③ 後継者が決まっている会社

その後継者が持分を承継できる定款になっているか確認します。

④ 設立時から定款を一度も見直していない会社

会社設立時のひな型が、現在の希望する事業承継に合っているとは限りません。

⑤ 代表社員が高齢になっている会社

死亡後の代表社員や会社の運営体制をあらかじめ検討しておくことが重要です。

合同会社は株式会社と比べ、定款によって柔軟に会社の仕組みを設計できることが特徴です。その一方で、定款の内容によって社員死亡後の結果が大きく変わることがあります。

まとめ

合同会社の社員が亡くなった場合、株式会社の株主が死亡した場合と同じようには処理できません。

原則として、社員は死亡によって退社します。そして、相続人が当然に社員になるわけではありません。

ただし、定款に相続人が持分を承継する旨の定めを設けておけば、相続人が社員となることができます。

特に重要なのは、次の点です。

① 合同会社の社員は、死亡すると原則として退社すること

② 相続人が当然に社員になるわけではないこと

③ 相続人に持分を承継させるには、定款の定めが重要であること

④ 代表社員が死亡した場合には、代表社員や業務執行社員の変更登記を確認すること

⑤ 一人合同会社では、社員死亡後の事業承継をあらかじめ考えておくこと

大志法務事務所では、合同会社の社員変更、代表社員変更、定款変更、会社の事業承継に伴う商業登記などに対応しています。

「代表社員である父が亡くなった」

「合同会社を子どもに継がせたい」

「今の定款で相続人が社員になれるのか確認したい」

「一人合同会社なので、自分が亡くなった後が心配」

という場合には、お気軽にご相談ください。

合同会社の事業承継は、相続が起きてから考えるより、元気なうちに定款を確認しておくことが重要です。

参考情報

※本記事は2026年10月26日時点の法令等に基づく一般的な解説です。社員死亡時の持分承継、定款変更、相続人の取扱い、変更登記の内容は、会社の定款や社員構成、相続関係などによって異なります。