会社の株式を家族に譲りたい!社長の判断だけで譲渡できる?
譲渡制限株式の承認手続・株主名簿の書換え・登記の必要性を解説します

「父が経営している株式会社を、息子に引き継がせたいと考えています」

「父が持っている株式を息子に譲ればよいと思うのですが、何か手続が必要なのでしょうか?」

「社長が承諾すれば、株式を譲渡できるのでしょうか?」

このような相談があります。

株式会社の株式は、原則として自由に譲渡することができます。しかし、中小企業の多くは、定款で株式の譲渡を制限しています。このような株式を「譲渡制限株式」といいます。

譲渡制限株式を譲渡する場合には、原則として会社の承認が必要です。そして、会社の承認を受けるためには、定款や会社法に従った手続を行わなければなりません。

今回は、中小企業の株式を家族や第三者に譲渡する際の承認手続、必要書類、株主名簿の書換え、登記の要否について解説します。

1.会社の株式は自由に譲渡できる?

株式会社の株式は、原則として自由に譲渡できます。しかし、会社法では、定款によって株式の譲渡による取得について会社の承認を必要とすることが認められています。

例えば、父親が株式会社の株式を100株所有している場合です。その100株を息子に譲渡しようとしても、会社の定款に譲渡制限の定めがあれば、原則として会社の承認を受ける必要があります。

この制度は、会社にとって望ましくない人物が株主になることを防ぎ、安定した経営を維持するためのものです。

特に、家族経営の会社や少人数で経営している会社では、株主構成を維持することが重要になるため、譲渡制限が設けられていることが多くあります。

2.自分の会社の株式に譲渡制限があるか確認する方法は?

まず、会社の登記事項証明書を確認します。

株式の譲渡制限がある会社では、登記事項証明書の「株式の譲渡制限に関する規定」に、その内容が記載されています。

例えば、次のような規定です。

「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。」

または、「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。」

このような規定がある場合には、原則として会社の承認が必要です。ただし、登記事項証明書だけでなく、定款も確認することが重要です。

定款には、一定の場合に承認を不要とする規定などが設けられていることもあるからです。

3.親から子どもへの株式譲渡でも承認は必要?

原則として必要です。

例えば、父親が会社の株式を100%所有しており、その株式を長男に譲渡する場合です。親子間の譲渡であっても、定款に譲渡制限の定めがあれば、原則として会社の承認が必要になります。

「家族だから自由に譲渡できる」というわけではありません。

また、現在の株主から別の既存株主に譲渡する場合でも、原則として譲渡承認が必要です。

ただし、定款で一定の譲渡について承認を不要とする取扱いを定めている場合には、その内容に従います。

株式を誰に譲るかだけでなく、会社の定款にどのような規定があるかが重要です。

4.株式譲渡の承認は誰が決める?

会社法第139条では、譲渡制限株式の譲渡承認について、原則として次の機関が決定するとされています。

会社の種類 原則として承認を決定する機関
取締役会設置会社 取締役会
取締役会を設置していない会社 株主総会

ただし、定款に別段の定めがある場合には、その定めに従います。

例えば、取締役会を設置していない会社でも、定款で代表取締役を承認権者としている場合があります。

そのため、単に社長が「いいよ」と言っただけで、必ず適法な譲渡承認になるとは限りません。誰が承認する権限を持っているのか、定款を確認する必要があります。

5.株式譲渡の承認手続はどのように進める?

一般的には、次のような流れで進めます。

① 定款と登記事項証明書を確認する

譲渡制限の有無と承認機関を確認します。

② 株式譲渡承認請求を行う

株主から会社に対して、株式を譲渡することについて承認を求めます。

③ 会社が承認するかどうかを決定する

株主総会や取締役会など、定款に定められた機関で決定します。

④ 承認結果を通知する

会社から承認請求者に対して、決定内容を通知します。

⑤ 株式譲渡契約を履行する

売買や贈与など、当事者間で定めた契約内容に従って手続を進めます。

⑥ 株主名簿を書き換える

新しい株主の情報を株主名簿に反映します。

なお、株券発行会社では、株券の交付などについても確認が必要です。また、契約締結と承認取得の順序は、契約条件によって異なる場合があります。

6.株式譲渡承認請求書には何を書く?

会社法第138条では、譲渡承認請求に必要な事項が定められています。

例えば、譲渡前の株主が承認を請求する場合には、次のような事項を明らかにします。

  • 譲渡しようとする株式の数
  • 株式を譲り受ける人の氏名または名称
  • 会社が承認しない場合に、会社または指定買取人による買取りを請求するかどうか

例えば、父親が長男に100株を譲渡する場合には、「株主Aが所有する普通株式100株をBに譲渡することについて、承認を請求する」といった内容になります。

会社の承認を求める書類であるため、譲渡する株式の内容や譲受人を明確にすることが重要です。

7.会社が株式譲渡を承認しなかったら?

会社が譲渡を承認しない場合もあります。例えば、会社の経営方針に合わない第三者が株主になることを避けたい場合です。

ただし、会社が承認しなかったからといって、常に株主が株式を処分できなくなるわけではありません。

承認請求の際に、会社が承認しない場合には会社または指定買取人による買取りを求める旨の請求がされているときは、会社法に定められた買取手続が問題になります。

この場合、会社自身が株式を買い取るか、指定買取人を定めることになります。

また、買取価格について当事者間で協議がまとまらない場合には、裁判所による価格決定の手続が問題になることもあります。

不承認となった場合には、会社法に定められた手続と期限を確認する必要があります。

8.会社が承認請求を放置するとどうなる?

ここは特に注意が必要です。

会社法第145条では、一定の場合に、会社が株式譲渡を承認したものとみなされる制度が設けられています。

例えば、適法な譲渡承認請求を受けた会社が、原則として請求の日から2週間以内に承認するかどうかの通知をしなかった場合です。

この場合、会社が承認したものとみなされることがあります。

ただし、定款でこれより短い期間を定めている場合や、会社と請求者との合意による別段の取扱いがある場合には注意が必要です。また、不承認後の買取手続についても、一定の期限が設けられています。

したがって、株式譲渡承認請求を受けた会社は、回答を後回しにせず、速やかに定款と会社法を確認することが重要です。

9.株式を譲渡したら、法務局で登記する必要がある?

通常、株主が変わっただけでは、株主の変更登記は必要ありません。

株式会社の登記事項証明書には、原則として個々の株主の氏名や持株数は記載されていないからです。

例えば、父親が所有していた100株を長男に譲渡した場合です。この株式譲渡によって株主が変わったとしても、それだけで法務局に株主変更の登記を申請する必要はありません。

ただし、株式譲渡に伴って代表取締役や取締役が交代する場合には、別途、役員変更登記などが必要になることがあります。

株主の変更と、会社の役員の変更は別の手続です。

10.株主名簿の書換えは必要?

株式譲渡によって株主が変わった場合には、株主名簿の書換えが重要になります。

株主名簿には、株主の氏名または名称、住所、保有株式数などが記載されます。

株券不発行会社の株式譲渡では、原則として、株主名簿に新しい株主の情報を記載または記録しなければ、その株式の取得を会社その他の第三者に対抗できません。

そのため、譲渡契約を締結しただけで手続を終わらせるのではなく、株主名簿の書換えまで確認することが大切です。

なお、株券発行会社では、株券の交付が株式譲渡の効力に関係するため、株券の発行状況も確認する必要があります。

11.株式を無償で譲渡すると、税金はどうなる?

例えば、父親が所有している会社の株式を、長男に無償で譲渡する場合です。

この場合、税務上は贈与として扱われ、贈与税が問題になることがあります。

一方、株式を売買する場合には、譲渡所得に対する課税などを検討する必要があります。

また、親族間で実際の価値より著しく低い価格で株式を譲渡した場合には、税務上、贈与とみなされる可能性があります。

特に、非上場会社の株式は、その価値を簡単に判断できない場合があります。

「額面が1万円だったから、1株1万円で譲渡すればよい」という考え方は適切とは限りません。

株式の評価や課税関係については、税理士に相談することをおすすめします。

12.株式を家族に譲る前に確認しておきたいこと

会社の株式を家族や第三者に譲渡する場合には、次の点を確認しましょう。

① 定款に譲渡制限の定めがあるか

まず、株式の譲渡に会社の承認が必要か確認します。

② 誰が承認するのか

株主総会、取締役会、代表取締役など、承認権者を確認します。

③ 株主名簿が整備されているか

現在の株主と保有株式数を確認します。

④ 株券発行会社かどうか

株券の発行状況や交付の必要性を確認します。

⑤ 株式譲渡契約の内容を確認する

譲渡する株式数、譲渡価格、譲渡日などを明確にします。

⑥ 税務上の問題がないか

贈与税や譲渡所得税などへの影響を確認します。

⑦ 役員変更を伴うか

株式譲渡と同時に社長が交代する場合には、役員変更登記についても確認します。

まとめ

中小企業の株式を家族や第三者に譲渡する場合、定款に譲渡制限の定めがあれば、原則として会社の承認が必要になります。

親子間の譲渡であっても、当然に承認が不要になるわけではありません。また、承認権者は会社の機関設計や定款によって異なります。

特に重要なのは、次の点です。

① 中小企業の株式には、譲渡制限が設けられていることが多いこと

② 親子間の株式譲渡でも、原則として会社の承認が必要になること

③ 承認権者は、株主総会や取締役会など、定款に従って確認すること

④ 承認請求を放置すると、承認したものとみなされる場合があること

⑤ 株主が変わっただけでは、通常、法務局での変更登記は必要ないこと

⑥ 株式譲渡後には、株主名簿の書換えが重要になること

大志法務事務所では、会社の定款確認、株式譲渡に伴う会社法上の手続に関するご相談、株式譲渡とあわせて行う役員変更登記などに対応しています。

「父親の会社の株式を息子に譲りたい」

「株式譲渡に株主総会の承認が必要なのか分からない」

「会社の株主名簿が古いままになっている」

「株式譲渡と同時に社長も交代する予定」

という場合には、お気軽にご相談ください。

会社の株式を譲渡するときには、契約だけでなく、定款に基づく承認手続と株主名簿の管理を確認することが大切です。

参考情報

※本記事は2026年10月26日時点の法令等に基づく一般的な解説です。株式譲渡の承認手続、株主名簿の書換え、株券の取扱いなどは、会社の定款や個別の事情によって異なります。株式の評価や課税関係については税理士等にご確認ください。