合同会社を株式会社に変更できる?会社を作り直す必要はある?
組織変更の手続・官報公告・必要な登記・費用と期間を解説します

「設立費用が安かったので、最初は合同会社にしました」

「事業が順調に成長してきたので、そろそろ株式会社に変更したいと考えています」

「合同会社を一度解散して、新しく株式会社を設立しなければならないのでしょうか?」

このような相談があります。

合同会社は、株式会社と比較して設立時の費用を抑えられることや、会社内部の運営を柔軟に決められることなどから、小規模事業者や新規事業の会社形態として利用されています。

一方、事業の拡大や取引先との関係、将来的な資金調達などを考えて、株式会社への変更を希望する場合もあります。

実は、合同会社を株式会社に変更することは可能です。会社法では、この手続を「組織変更」といいます。

組織変更では、会社の法人格を維持したまま、合同会社から株式会社へ会社形態を変更することができます。

ただし、単に会社名の「合同会社」を「株式会社」に書き換えるだけではありません。組織変更計画の作成、社員の同意、債権者保護手続、登記申請などが必要になります。

今回は、合同会社から株式会社への組織変更について、具体的な手続と注意点を解説します。

1.合同会社から株式会社に変更することはできる?

はい、できます。会社法では、合同会社などの持分会社が株式会社に組織変更することを認めています。

例えば、「合同会社大志商事」という会社を、「株式会社大志商事」に変更することができます。

この場合、合同会社を清算して、別の株式会社を新たに設立する必要はありません。組織変更によって、同じ法人格のまま株式会社になります。

ただし、登記手続上は、組織変更後の株式会社について設立登記を行い、従前の合同会社について解散登記を行うことになります。

この「解散登記」は、通常の会社解散・清算とは意味が異なります。会社が消滅するわけではなく、会社形態が変わることに伴う登記です。

2.合同会社と株式会社は何が違う?

合同会社と株式会社は、どちらも法人格を持つ会社ですが、会社内部の仕組みに違いがあります。

項目 合同会社 株式会社
出資者の呼び方 社員 株主
会社の経営 原則として社員が業務を執行 取締役などが業務を執行
最高意思決定機関 定款・会社法に従い社員が決定 株主総会
出資者の地位 持分 株式
決算公告 原則として義務なし 原則として義務あり
役員の任期 株式会社とは異なる仕組み 取締役などに任期あり

合同会社は、比較的少人数で柔軟に運営することに適しています。一方、株式会社では、株式を発行することができ、取締役や株主総会などの機関を設けて運営します。

もっとも、株式会社だから必ず事業に有利というわけではありません。会社の規模や経営方針に合わせて判断することが大切です。

3.株式会社に変更すると、会社の財産や契約はどうなる?

組織変更では、原則として同じ法人格が維持されます。そのため、合同会社が所有している財産や負担している債務は、組織変更によって当然に別法人へ移転するものではありません。

例えば、合同会社が次のような財産を持っている場合です。

  • 会社名義の預貯金
  • 会社名義の不動産
  • 事業用の自動車
  • 売掛金
  • 借入金

これらは、基本的に同じ会社に帰属したままです。また、会社が締結している契約についても、組織変更によって当然に別法人との契約になるわけではありません。

ただし、契約書に組織変更時の通知義務や承諾条項が設けられている場合があります。金融機関、取引先、許認可の所管官庁などへの届出や確認が必要になることもあります。

法人格が同じであることと、対外的な手続が一切不要であることは別です。

4.組織変更にはどのような手続が必要?

合同会社から株式会社への組織変更は、一般的に次のような流れで進めます。

① 株式会社への組織変更を検討する

株式会社の商号、役員構成、発行する株式などを検討します。

② 組織変更計画を作成する

会社法に定められた事項を記載した計画を作成します。

③ 社員の同意を得る

原則として、合同会社の総社員の同意が必要です。

④ 債権者保護手続を行う

官報公告や債権者への催告などを行います。

⑤ 組織変更の効力が発生する

所定の手続を完了すると、組織変更計画に定めた効力発生日に株式会社になります。

⑥ 法務局で登記申請を行う

株式会社の設立登記と合同会社の解散登記を申請します。

これらの手続を順序立てて進める必要があります。

5.組織変更計画とは?

組織変更を行う場合には、会社法第746条に基づき、組織変更計画を作成します。

組織変更計画には、例えば次のような事項を定めます。

  • 組織変更後の株式会社の商号
  • 株式会社の目的
  • 本店所在地
  • 発行可能株式総数
  • 定款で定める事項
  • 組織変更後の取締役など
  • 合同会社の社員に割り当てる株式
  • 組織変更の効力発生日

例えば、合同会社の社員が父親と長男の2人である場合、株式会社への組織変更後に、それぞれ何株を保有するのかを決める必要があります。

合同会社の持分が、そのまま自動的に同じ割合の株式になるとは限りません。組織変更後の株主構成や経営体制を十分に検討することが重要です。

6.社員全員の同意が必要?

合同会社が株式会社に組織変更する場合には、原則として総社員の同意が必要です。ただし、定款に別段の定めがある場合には、その内容を確認する必要があります。

例えば、合同会社の社員が3人いる場合です。Aさん、Bさん、Cさんが社員であれば、原則として3人全員の同意を得ます。

ここでいう社員とは、従業員のことではありません。合同会社に出資している構成員のことです。

社員が1人しかいない合同会社であれば、その社員の意思によって手続を進めることになります。

なお、総社員の同意は、原則として組織変更の効力発生日の前日までに得る必要があります。

7.官報公告が必要なのはなぜ?

合同会社から株式会社への組織変更では、債権者保護手続が必要です。これは、会社にお金を貸している金融機関や取引先などの債権者を保護するための手続です。

具体的には、組織変更する旨や、債権者が異議を述べることができる旨などを官報に公告します。また、原則として、会社が把握している債権者に対して個別の催告を行う必要があります。

ただし、法定の要件を満たす公告方法を併用した場合には、個別催告を省略できることがあります。

債権者が異議を述べることができる期間は、1か月を下回ることができません。

この期間を確保する必要があるため、組織変更は数日で完了する手続ではありません。

8.債権者から異議が出たらどうなる?

債権者保護手続において、債権者から異議が出される場合があります。

その場合、会社は原則として、次のような対応を検討する必要があります。

  • 債務を弁済する
  • 相当の担保を提供する
  • 弁済を受けさせるために相当の財産を信託する

ただし、組織変更によってその債権者を害するおそれがない場合には、これらの対応を要しないことがあります。

例えば、金融機関から借入れをしている会社では、組織変更を予定していることを事前に相談しておくことが望ましいでしょう。

官報公告を掲載しただけで、必ず組織変更が完了するわけではありません。債権者保護手続が適切に終了していることが必要です。

9.株式会社に変更した場合、代表社員は社長になる?

合同会社の代表社員が、組織変更後の株式会社の代表取締役に自動的になるわけではありません。

株式会社では、取締役を選任し、必要に応じて代表取締役を定めます。

例えば、合同会社で次のような構成だったとします。

  • 代表社員 父
  • 業務執行社員 長男

株式会社への組織変更後は、

  • 代表取締役 長男
  • 取締役 父

とすることも考えられます。

つまり、組織変更を機会に、経営者を交代することも可能です。ただし、取締役や代表取締役の選定は、組織変更後の株式会社の機関設計や会社法に従って行う必要があります。

組織変更は、単に会社形態を変えるだけでなく、事業承継や経営体制を見直す機会にもなります。

10.組織変更の登記はいつまでに必要?

合同会社から株式会社への組織変更では、効力発生日から2週間以内に、本店所在地において登記申請を行う必要があります。

登記手続では、原則として次の2つの登記を同時に申請します。

① 組織変更による株式会社の設立登記

② 組織変更による合同会社の解散登記

なお、ここでいう株式会社の設立登記は、新しい法人を別に作るという意味ではありません。会社の法人格は維持されたまま、登記記録上の会社形態が変わることになります。

申請には、組織変更計画書、定款、社員の同意を証する書面、債権者保護手続に関する書面、役員の就任承諾書など、事案に応じた添付書類が必要です。

11.組織変更にはどのくらいの費用と期間がかかる?

組織変更には、主に次の費用が発生します。

費用の種類 目安・内容
株式会社の設立登記の登録免許税 原則として資本金の額の0.15%、最低3万円
合同会社の解散登記の登録免許税 3万円
官報公告費用 掲載内容・行数などにより異なる
専門家への報酬 依頼内容によって異なる

登録免許税は、一般的なケースでは合計6万円以上となります。ただし、組織変更後の資本金の額などによって異なるため、実際の費用は個別に確認する必要があります。

また、組織変更では債権者保護手続のために1か月以上の異議申述期間を設ける必要があります。官報公告の申込みや書類作成、登記審査などの期間も必要です。

そのため、全体のスケジュールとしては、余裕をもって2〜3か月程度を見込んでおくとよいでしょう。なお、これは一般的な目安であり、法定の最低所要期間を意味するものではありません。

12.合同会社から株式会社に変更した方がよい?

合同会社を株式会社に変更することが、必ずしもすべての会社にとって有利とは限りません。

例えば、次のような場合には、株式会社への組織変更を検討する余地があります。

① 取引先との関係で株式会社が求められる場合

取引先の方針によって、株式会社であることが取引条件になる場合があります。

② 外部からの出資を受けたい場合

株式を利用した資金調達を検討する場合には、株式会社の仕組みが適していることがあります。

③ 将来的に事業承継を予定している場合

株式による所有と経営の分離を検討することができます。

④ 会社の経営体制を整備したい場合

取締役や株主総会などの制度を利用し、会社の運営体制を見直すことができます。

一方、株式会社に変更すると、役員の任期管理や決算公告など、合同会社とは異なる管理上の負担も生じます。

株式会社に変更するメリットだけでなく、その後の維持管理も考慮する必要があります。

まとめ

合同会社から株式会社への変更は、会社法に定められた「組織変更」という手続によって行うことができます。合同会社を清算して、新たに別の株式会社を設立する必要はありません。

ただし、単なる商号変更ではなく、組織変更計画の作成、社員の同意、債権者保護手続、登記申請などが必要です。

特に重要なのは、次の点です。

① 合同会社は、法人格を維持したまま株式会社に変更できること

② 組織変更計画を作成し、原則として総社員の同意を得る必要があること

③ 官報公告などの債権者保護手続が必要であること

④ 債権者の異議申述期間は1か月以上必要であること

⑤ 効力発生日から2週間以内に、株式会社の設立登記と合同会社の解散登記を行うこと

⑥ 株式会社への変更後は、役員の任期管理や決算公告なども必要になること

大志法務事務所では、合同会社から株式会社への組織変更に関するご相談、組織変更計画や定款の作成支援、商業登記手続などに対応しています。

「合同会社で始めた事業が大きくなったので、株式会社にしたい」

「取引先から株式会社への変更を求められている」

「株式会社への変更と同時に、息子を代表取締役にしたい」

「組織変更に必要な期間や費用を知りたい」

という場合には、お気軽にご相談ください。

会社の形態を変更する際には、登記だけでなく、今後の経営方針や事業承継まで考えて準備することが大切です。

参考情報

※本記事は2026年10月28日時点の法令等に基づく一般的な解説です。組織変更の手続、必要書類、登録免許税、債権者保護手続などは、会社の定款、資本金、債権者の状況、組織変更後の機関設計などによって異なります。