不動産を買ったり相続したりすると、国籍も法務局に伝えるの?
2026年10月5日から「検索用情報」に国籍等が追加されます

「不動産登記で国籍を伝えることになるらしい」

そんな話を聞いて、

「日本人でも必要なの?」

「登記簿に国籍が載るの?」

「住民票をもう1通取らなければいけないの?」

と思われる方もいるかもしれません。

2026年10月5日から、不動産の所有者になる個人が行う「検索用情報の申出」に、これまでの氏名・住所・生年月日・メールアドレスなどに加えて、「国籍等」が追加されます。

不動産を買う場合だけでなく、相続や贈与などによって所有権の登記名義人になる場合にも関係する制度です。

今回は、何が変わるのかを一般の方にも分かるように整理します。

1.そもそも「検索用情報」って何?

2026年4月1日から、不動産の所有者について住所・氏名変更登記が義務化されました。

住所や氏名が変わった場合、原則として変更した日から2年以内に変更登記をする必要があります。

一方、所有者が引っ越すたびに法務局へ登記申請をするのは負担になります。

そこで始まったのが、法務局が住民基本台帳ネットワークの情報を利用して住所や氏名の変更を確認し、本人の了解を得たうえで職権で変更登記を行う「スマート変更登記」です。

この仕組みを利用するために、法務局へあらかじめ提供する情報が「検索用情報」です。

これまでは主に、

  • 氏名
  • 氏名の振り仮名(外国籍の方はローマ字氏名)
  • 住所
  • 生年月日
  • メールアドレス

を申し出る仕組みでした。

そして、2026年10月5日以降は、ここに「国籍等」が加わります。

2.日本人も「日本」と申し出るの?

はい。

「国籍等」という言葉から外国籍の方だけの制度のように感じますが、日本国籍の方も対象です。

2026年10月5日以降に検索用情報を申し出る場合には、国籍等についても申出を行います。

例えば日本国籍であれば「日本」、外国籍であればその国籍の属する国を申し出ることになります。

制度上の「国籍等」には国だけでなく、「台湾」や「ヨルダン川西岸地区及びガザ地区」といった地域も含まれます。

したがって、「外国人だけが国籍を申告する制度」ではありません。

日本人が不動産を取得する一般的な所有権移転登記や所有権保存登記でも関係してきます。

3.どんな登記をするときに必要になる?

対象となる代表的なものは、

  • 所有権保存登記
  • 所有権移転登記
  • 一定の合体による登記等
  • 新たに所有権の登記名義人となる人がいる所有権更正登記

です。

一般の方に身近なケースで考えると、

不動産を買った

不動産の贈与を受けた

親などから不動産を相続した

新築した建物について初めて所有権保存登記をする

といった場面が考えられます。

ただし、対象となるのは基本的に自然人、つまり個人です。

会社などの法人が所有者になる場合については、この個人向けの検索用情報の申出とは仕組みが異なります。

4.なぜ法務局が国籍を知る必要があるの?

今回の制度変更には、将来の相続登記を円滑にする目的があります。

日本では、相続が発生したときに、必ず日本法だけを見ればよいとは限りません。

所有者が外国籍の場合には、どの国の法律が相続に適用されるのかという「準拠法」の確認が必要になることがあります。

ところが、所有者の国籍が分からなければ、相続が発生した後になってから国籍や適用される法律を調査しなければならないことがあります。

そこで、所有者が登記名義人となる段階などで国籍等の情報を把握しておき、将来相続が発生した場合の準拠法確認の基礎情報として利用する仕組みです。

つまり、単に「国籍を集める」という制度ではなく、将来の相続登記を適正かつ円滑に進めるための情報という位置付けです。

5.日本国籍であることは、何で証明する?

日本国籍の方の場合、国籍等を証する情報として、例えば、

  • 本籍地が記載された住民票の写し
  • 戸籍の附票の写し

などを利用することができます。

ここで、「登記のために今までの住民票とは別に、国籍証明用の書類を必ず追加しなければならないの?」と思われるかもしれません。

必ずしもそうではありません。

所有権移転登記などでは、従来から住所を証明するために住民票の写しなどを使用する場合があります。

その書類によって国籍等についても確認できれば、同じ書類を兼ねることができ、国籍確認だけのために追加書類が必要にならない場合があります。

これは実務上、重要なポイントです。

6.住民票の「本籍」が省略されていたらダメ?

ここは少し細かいですが、実務では重要です。

法務省が示している国籍等の申出に関する取扱いでは、日本国籍を有する人について、住民票の写しに「本籍欄」自体が表示されていれば、その記載内容が「省略」となっている場合でも、日本国籍を有する人であることを判断できるとされています。

つまり、

「本籍地の具体的な○○県○○市○番地まで必ず表示された住民票でなければ絶対に使えない」

というわけではありません。

また、住民票コードを提供し、登記所が住基ネットで日本国籍を確認できる場合など、別途国籍等を証する情報の提供を要しない取扱いもあります。

実際の申請では、住所証明情報や検索用情報との関係を見ながら、どの書類を利用するかを判断します。

7.相続登記なら、法定相続情報一覧図を使える場合も

相続登記では「法定相続情報一覧図の写し」を利用することがあります。

日本国籍を有する人については、この法定相続情報一覧図の写しを国籍等を証する情報として利用できる取扱いも示されています。

相続登記ではすでに、

  • 戸籍
  • 住民票
  • 戸籍の附票
  • 法定相続情報一覧図

など複数の書類を使用することがあります。

そのため、国籍等の申出制度が始まったからといって、すべての相続登記で新しい証明書を1種類追加取得しなければならない、ということではありません。

すでに登記のために用意している書類を利用できるか確認することが大切です。

8.外国籍の方は何で証明する?

外国籍の方については、国籍または地域が記載された、

  • 住民票の写し
  • 旅券(パスポート)
  • 在留カード
  • 特別永住者証明書

などが国籍等を証する情報として考えられます。

外国に住所がある方などについては、日本国内に住所がある方とは必要書類や取扱いが異なる場合があります。

また、外国籍の方が所有権の登記名義人となる場合には、国籍等とは別に、ローマ字氏名についても確認が必要になります。

外国籍の方が関係する登記では、住所・氏名・ローマ字氏名・国籍等をまとめて確認しておくことが重要です。

9.10月5日から申請書やオンライン申請も変わります

今回の変更に合わせて、登記申請の様式やオンライン申請システムも変更されます。

法務局が2026年9月に更新した不動産登記申請書の案内でも、「10月5日以降は、登記名義人となる方の国籍等を申し出ていただくことになります」と案内されています。

また、登記・供託オンライン申請システムでは、10月3日夜以降に申請用総合ソフトが新しいバージョンへ更新され、国籍等を入力できるようになります。

10月5日午前8時30分以降は、「かんたん登記・供託申請」についても更新後の手続が利用できる予定です。

司法書士などが代理して登記申請する場合にも関係する変更です。

10.「10月5日から登記簿に国籍が載る」と考えるのは正確ではありません

今回追加される国籍等は、「検索用情報」の一つです。

法務省は、申出を受けた検索用情報を「検索用情報管理ファイル」に記録するとしています。

一方、外国籍の方のローマ字氏名については登記記録に氏名と併記されることが明示されています。

したがって今回の制度は、単純に「10月5日から不動産の登記簿に所有者の国籍欄が新設される」と理解するものではありません。

所有者の検索用情報として国籍等を申し出る制度が始まると理解するのが適切です。

まとめ

2026年10月5日から、不動産の所有権保存・所有権移転などに伴う検索用情報の申出に、「国籍等」が追加されます。

日本人も対象で、日本国籍であれば「日本」として申し出ます。

ただし、

「国籍等の申出が始まる=すべての人が国籍証明書を新たに1通取得しなければならない」

というわけではありません。

本籍に関する表示のある住民票、戸籍の附票、相続の場合の法定相続情報一覧図など、すでに登記手続で使用する情報によって確認できる場合があります。

10月5日以降に不動産の売買、贈与、相続、新築建物の所有権保存登記などを予定している方は、これまでの必要書類に加えて、国籍等をどの情報で確認できるかも確認しておくと手続がスムーズです。

参考情報

法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」
国籍等を含む検索用情報の制度・令和8年9月4日付通達を確認する

法務局「不動産登記の申請書様式について」
10月5日以降の相続・売買・贈与・所有権保存登記の様式を確認する

登記・供託オンライン申請システム「令和8年9月のお知らせ」
申請用総合ソフト9.4A・かんたん登記の更新内容を確認する

※制度内容は2026年9月30日時点の公表情報に基づいています。