共有名義の不動産、自分の持分だけ売れる?
共有者の同意が必要な場合と、持分だけを売却する場合の違いを解説します
「兄弟2人で相続した実家を売りたいのですが、兄が反対しています」
「夫婦共有名義の土地について、自分の持分だけ売ることはできますか?」
「共有者の一人が勝手に持分を売却したと聞きました。そんなことができるのでしょうか?」
不動産を複数人で所有している場合、売却について意見が一致しないことがあります。
ここで知っておきたいのが、「不動産全体を売ること」と「自分の共有持分だけを売ること」は、法律上別の行為だということです。
共有者全員の同意がなければできないこともあれば、各共有者が自分の判断でできることもあります。
今回は、共有名義の不動産を売却するときの基本的なルールと、共有関係を解消する方法について整理します。
1.そもそも「共有名義」とは?
例えば、兄Aと弟Bが、土地と建物を2分の1ずつ所有しているとします。
登記事項証明書には、所有者として次のように記載されています。
共有者
- A 持分2分の1
- B 持分2分の1
この状態を「共有」といいます。
共有持分とは、不動産の所有権を各共有者がどの割合で持っているかを示すものです。
ここで注意したいのは、持分2分の1だからといって、土地の右半分がA、左半分がBの所有になるわけではないということです。
AもBも、不動産全体について持分に応じた権利を持っています。
そのため、共有持分を売却する場合も、土地の一部分を切り取って売るわけではありません。
2.自分の共有持分だけなら、原則として売却できます
最初に結論をお伝えします。
共有者は、原則として、他の共有者の同意を得ずに自分の共有持分を売却できます。
例えば、AとBが2分の1ずつ所有している土地について、Aが自分の持分をCへ売却する場合です。
売却前は、
- A 持分2分の1
- B 持分2分の1
ですが、Aの持分がCへ移転すると、
- B 持分2分の1
- C 持分2分の1
となります。
Bが売買契約の当事者になる必要はなく、原則としてBの承諾も必要ありません。
これは、自分の共有持分が独立した財産権として譲渡できるためです。
ただし、持分に担保権が設定されている場合や、契約上の制約などがある場合には、別途確認が必要です。
3.不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です
では、Aが、
「自分の持分だけではなく、土地全部を売りたい」
と考えた場合はどうでしょうか。
この場合、Aだけの判断で土地全体を売却することはできません。
Aが所有しているのは2分の1の持分であり、Bの持分まで処分する権限はないからです。
土地全体の所有権を買主に移転するには、原則として共有者全員が売却に合意し、それぞれの持分を譲渡する必要があります。
つまり、
自分の持分だけを売却する
→ 原則として他の共有者の同意は不要
不動産全体を売却する
→ 原則として共有者全員の同意が必要
という違いがあります。
「共有名義だから、何をするにも全員の同意が必要」というわけではありません。
4.共有持分だけを売る場合、買主は見つかる?
法律上、自分の持分だけを売却できるとしても、実際に買主が見つかるかは別の問題です。
例えば、土地の2分の1の持分だけを購入しても、買主は土地全体を自由に処分できるわけではありません。
もう一人の共有者との関係が残るからです。
そのため、一般的には、不動産全体を売却する場合と比べて、共有持分だけの売却は買主が限られたり、価格面で不利になったりする可能性があります。
また、共有持分を買い取る専門業者などもありますが、提示される価格や契約条件は慎重に確認する必要があります。
「持分2分の1だから、不動産全体の価格の半額で売れる」とは限りません。
売却を考える場合には、不動産全体を売る方法と持分だけを売る方法を比較することが大切です。
5.他の共有者に買い取ってもらう方法もあります
共有関係を解消したい場合、第三者に持分を売却するだけが方法ではありません。
例えば、兄Aと弟Bが実家を共有しており、弟Bがその家に住み続けたいと考えている場合です。
兄Aは自分の持分を弟Bに売却し、弟Bが単独所有者になる方法を検討できます。
売却前は、
- 兄A 持分2分の1
- 弟B 持分2分の1
売却後は、
- 弟B 持分全部
となります。
この場合、兄Aは持分の売却代金を受け取り、弟Bは単独所有者になります。
双方が価格や支払条件について合意できれば、共有関係を整理する有効な方法です。
なお、売買価格が著しく低い場合などには、税務上の問題が生じる可能性もあるため、必要に応じて税理士へ確認することが大切です。
6.共有者の一人が反対している場合はどうする?
例えば、兄弟2人が共有する空き家について、
兄A:「誰も住まないから売却したい」
弟B:「思い出の家だから売りたくない」
と意見が分かれている場合です。
このとき、兄Aは弟Bに対して、無理やり不動産全体の売却契約に署名させることはできません。
しかし、共有状態を解消する方法が全くないわけでもありません。
民法第256条では、原則として、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定められています。
これを「共有物分割請求」といいます。
共有者間で話し合いがまとまらない場合には、裁判所の手続によって共有関係の解消を目指すことも考えられます。
ただし、共有物分割には例外や制限があり、特に相続による遺産共有が続いている場合には、通常の共有物分割とは異なる検討が必要になることがあります。
7.共有物分割には、どのような方法がある?
共有物分割の方法には、主に次のようなものがあります。
① 現物分割
土地などを物理的に分け、それぞれが単独で所有する方法です。
例えば、一つの土地を分けて、Aが一方を、Bがもう一方を取得する方法です。
ただし、土地の形状、面積、接道状況、法令上の制限などによっては、実際に分けることが難しい場合もあります。
② 代償を支払って一方が取得する方法
共有者の一人が不動産を取得し、他の共有者へ金銭を支払う方法です。
例えば、弟Bが不動産全部を取得し、兄Aに持分相当額を支払う場合です。
③ 売却して代金を分ける方法
不動産を売却し、その代金を持分に応じて分ける方法です。
話し合いによる任意売却のほか、裁判所が競売による分割を命じる場合もあります。
どの方法が適切かは、不動産の状況や共有者の事情によって異なります。
8.共有者が行方不明の場合はどうなる?
共有不動産で問題になりやすいのが、共有者の所在が分からないケースです。
例えば、
「祖父の代から共有になっている土地がある」
「共有者の一人が何十年も前に転居しており、連絡が取れない」
といった場合です。
以前は、共有者の所在が分からないことが、不動産の売却や管理を進めるうえで大きな障害になっていました。
そこで、2023年4月1日から施行された民法改正によって、所在等不明共有者に関する新しい制度が設けられました。
例えば、一定の要件の下で、裁判所の決定により、
- 所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得する制度
- 所在等不明共有者の持分を第三者へ譲渡する権限を付与する制度
などが利用できる場合があります。
ただし、これらは単に「連絡が取れない」というだけで自由に利用できる制度ではありません。
必要な調査や裁判所への申立て、供託など、法律で定められた手続が必要です。
また、相続による遺産共有の場合には、相続開始からの経過期間などについて特別な制限があります。
9.「共有持分の売却」と「共有物の管理」は別の話です
共有名義の不動産については、売却以外にもさまざまな判断が必要になります。
例えば、
- 建物を修繕する
- 不動産を賃貸する
- 建物を取り壊す
- 土地の利用方法を変更する
といった場合です。
民法では、共有物について行う行為を、その内容によって区別しています。
一般的には、
保存行為
→ 各共有者が単独で行うことができます。
管理に関する事項
→ 原則として持分の価格の過半数で決定します。
共有物の重要な変更
→ 原則として共有者全員の同意が必要です。
なお、2023年の民法改正により、形状や効用の著しい変更を伴わない軽微な変更については、持分の過半数で決定できるようになりました。
実際にどの行為に該当するかは、工事や契約の内容によって異なります。
例えば、建物の解体を「修繕の一種だから過半数で決められる」と単純に考えることはできません。
共有持分を売却する権利と、共有物そのものを変更・管理する権限は区別する必要があります。
10.共有持分を売却するときの登記は?
共有持分を売却した場合には、買主へ持分を移転するための所有権移転登記を行います。
例えば、AとBが各2分の1の持分を所有している土地について、Aが自分の持分をCへ売却した場合です。
このときは、Aの持分2分の1について、売買を原因とする持分全部移転登記を行うことになります。
登記の結果、共有者はBとCになります。
必要書類は個別の事情によって異なりますが、一般的には、
- 売買契約の内容を確認できる書類
- 売主の登記識別情報または登記済証
- 売主の印鑑証明書
- 買主の住所を証明する書類
- 登記原因証明情報
- 委任状
などを確認します。
売主の登記上の住所と現在の住所が異なる場合には、住所変更登記が必要になることもあります。
また、売買による所有権移転登記には登録免許税がかかります。
持分売買だからといって、登記手続が不要になるわけではありません。
11.相続で共有になった不動産は、特に慎重な確認が必要です
ここまで説明したのは、主に共有者とその持分が確定している不動産についてです。
一方、相続が発生し、まだ遺産分割協議が終わっていない場合には注意が必要です。
例えば、父が亡くなり、兄弟2人が相続人となったものの、誰が実家を取得するか決まっていない場合です。
このような遺産共有の状態と、遺産分割を終えて兄弟が共有名義で取得した状態では、適用される手続や法律関係が異なることがあります。
「法定相続分が2分の1だから、自分の持分だけ先に売ってしまえばよい」
と安易に判断すると、後の遺産分割や登記に影響する可能性があります。
相続が関係する場合には、
相続人が誰なのか
↓
遺産分割協議が終わっているか
↓
登記名義は現在どうなっているか
↓
誰の持分を誰に移転するのか
という順番で整理することが大切です。
12.共有名義の不動産を売る前に確認したいこと
共有不動産の売却を検討する際には、まず次の点を確認しましょう。
① 現在の共有者は誰か
登記事項証明書で、所有者と持分割合を確認します。
② 売りたいのは不動産全部か、自分の持分だけか
この違いによって、必要な同意や契約の内容が変わります。
③ 他の共有者の意向はどうか
不動産全体を売ることに賛成しているのか、持分の買取りを希望しているのかを確認します。
④ 抵当権などの担保権はないか
担保権の有無や設定範囲によって、売却方法や決済時の手続が変わることがあります。
⑤ 相続による共有ではないか
遺産分割の状況や過去の相続登記を確認します。
⑥ 税金や費用はどうなるか
譲渡所得税、登録免許税、その他の費用についても確認しておくと安心です。
まとめ
共有名義の不動産については、不動産全体を売却することと、自分の共有持分だけを売却することを区別する必要があります。
自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意を得ずに売却できます。
一方、不動産全体を売却する場合には、原則として共有者全員の合意が必要です。
また、共有関係を解消する方法としては、
- 他の共有者へ持分を売却する
- 第三者へ持分を売却する
- 共有者全員で不動産全体を売却する
- 共有物分割によって共有関係を整理する
といった選択肢があります。
ただし、相続による遺産共有が続いている場合や、共有者の所在が分からない場合には、別の手続を検討する必要があります。
大志法務事務所では、共有名義の不動産について、登記内容の確認、共有持分の売買による所有権移転登記、相続登記、共有関係を整理するための登記手続などに対応しています。
「兄弟で共有している土地を整理したい」
「共有持分だけを売却することになった」
「共有者が亡くなっているが、登記がそのままになっている」
という場合には、まず現在の登記内容を確認するところからご相談ください。
参考情報
※制度内容は2026年10月10日時点の公表情報に基づいています。実際の手続は、共有関係、相続の有無、担保権の状況などによって異なります。
