養子にも相続権はある?実子との違いと、遺産分割で注意したいこと
普通養子・特別養子の違い、法定相続分、相続税の取扱いを解説します
「父が亡くなり、相続手続を進めることになりました」
「父には実の子どもが2人いますが、以前、再婚相手の子どもとも養子縁組をしていたようです」
「養子にも相続権があるのでしょうか?」
「実の子どもと養子では、相続できる割合が違うのでしょうか?」
相続手続では、亡くなった方の配偶者や実の子どもだけでなく、養子が相続人になる場合があります。
また、普通養子縁組と特別養子縁組では、実の親との法律上の関係に違いがあります。
さらに、民法上は実子と同じ相続権が認められていても、相続税の計算では養子の人数に一定の制限が設けられています。
今回は、養子の相続権、実子との違い、遺産分割協議で注意したいことについて解説します。
1.養子にも相続権はある?
結論からいうと、養子にも、実子と同じように相続権があります。
民法第809条では、養子は養子縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得すると定められています。
そのため、養親が亡くなった場合、養子は原則として養親の子どもとして相続人になります。
例えば、父親に実子が2人、養子が1人いる場合です。
父親が亡くなったときには、養子を含めた3人が子どもとして相続人になります。
「血がつながっていないから相続できない」
ということにはなりません。
ただし、養子縁組が法律上有効に成立していることが前提です。
2.実子と養子では、相続分が違う?
実子と養子の法定相続分に違いはありません。
例えば、父親が亡くなり、相続人が母親、実子2人、養子1人だった場合です。
この場合の法定相続分は、次のようになります。
| 相続人 | 法定相続分 |
|---|---|
| 母親 | 2分の1 |
| 実子A | 6分の1 |
| 実子B | 6分の1 |
| 養子C | 6分の1 |
子ども全体の法定相続分である2分の1を、実子と養子の3人で均等に分けることになります。
例えば、遺産が6,000万円で、法定相続分どおりに分けるとすれば、母親が3,000万円、実子と養子がそれぞれ1,000万円です。
もっとも、法定相続分は、必ずその割合で遺産を分けなければならないという意味ではありません。
相続人全員が合意すれば、遺産分割協議によって異なる割合で分けることもできます。
3.普通養子と特別養子は何が違う?
養子縁組には、大きく分けて「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があります。
この2つは、実の親との法律上の親子関係に大きな違いがあります。
| 比較項目 | 普通養子縁組 | 特別養子縁組 |
|---|---|---|
| 養親との親子関係 | 成立する | 成立する |
| 実親との法律上の親子関係 | 原則として続く | 原則として終了する |
| 養親の相続 | できる | できる |
| 実親の相続 | 原則としてできる | 原則としてできない |
| 成立方法 | 原則として届出 | 家庭裁判所の審判 |
普通養子縁組の場合には、養親との親子関係が成立しても、実親との親子関係は原則としてなくなりません。
一方、特別養子縁組の場合には、原則として実親との法律上の親子関係が終了します。
相続手続では、この違いが重要になります。
4.普通養子は、実の親と養親の両方を相続できる?
はい。普通養子縁組の場合、原則として実親と養親の両方について相続権があります。
例えば、Aさんが実の父母のもとで生まれ、その後、叔父夫婦と普通養子縁組をした場合です。
Aさんは、叔父夫婦の法律上の子どもになります。
しかし、実の父母との親子関係も原則として続きます。
そのため、実の父母が亡くなった場合にも、養親である叔父夫婦が亡くなった場合にも、それぞれ相続人になることがあります。
ただし、相続放棄や相続欠格など、個別の事情がある場合は別です。
普通養子縁組をしたからといって、実の親の相続権を失うわけではありません。
5.再婚相手の子どもは、自動的に相続人になる?
例えば、父親が再婚し、再婚相手には前の結婚で生まれた子どもがいた場合です。
父親と再婚相手の子どもが一緒に暮らしていたとしても、それだけで法律上の親子関係が成立するわけではありません。
したがって、再婚相手の子どもは、父親と養子縁組をしていなければ、原則として父親の法定相続人にはなりません。
一方、父親がその子どもと普通養子縁組をしていれば、法律上の子どもとして相続権を取得します。
例えば、父親に実子が1人いて、再婚相手の子ども1人と養子縁組をした場合には、父親の相続において、実子と養子が同じ順位の相続人になります。
再婚家庭の相続では、婚姻関係だけでなく、養子縁組の有無を戸籍で確認することが重要です。
6.孫を養子にした場合、相続権はどうなる?
祖父母が孫と養子縁組をすることがあります。
例えば、祖父が孫を普通養子にした場合です。
この場合、孫は祖父の法律上の子どもという立場になります。
そのため、祖父が亡くなった場合には、孫は養子として相続人になります。
ただし、孫が養子になったからといって、実の親との親子関係がなくなるわけではありません。
また、孫養子の場合には、相続税の2割加算など、税務上の特別な取扱いが問題になることがあります。
相続対策として孫を養子にする場合には、民法上の相続関係だけでなく、相続税への影響も確認しておくことが大切です。
7.養子が何人いても、全員が相続人になる?
民法上、有効な養子縁組が成立していれば、原則として養子の人数にかかわらず、養子は相続人になります。
例えば、父親に実子が1人、養子が3人いる場合です。
父親が亡くなったときには、原則として実子1人と養子3人の合計4人が、子どもとして相続人になります。
この場合、配偶者がいなければ、4人の法定相続分はそれぞれ4分の1です。
ただし、相続税の計算では、これとは異なるルールがあります。
民法上の相続人の人数と、相続税の計算に用いる法定相続人の人数は、必ずしも一致しません。
8.相続税では、養子の人数に制限がある?
相続税の基礎控除額は、原則として次の計算式で求められます。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
ただし、相続税の計算において、法定相続人の数に含められる養子の人数には、原則として制限があります。
| 被相続人の状況 | 原則として算入できる普通養子の人数 |
|---|---|
| 実子がいる場合 | 1人まで |
| 実子がいない場合 | 2人まで |
例えば、実子が1人、普通養子が3人いる場合です。
民法上は、原則として4人全員が相続人になります。
しかし、相続税の基礎控除額の計算では、原則として実子1人と養子1人の合計2人として計算します。
この場合、基礎控除額は、
3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
となります。
なお、特別養子や、被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった人などは、相続税法上、実子として扱われる場合があります。
また、養子の数を利用して相続税の負担を不当に減少させると認められる場合には、税法上の制限が適用されることがあります。
具体的な相続税の計算については、税理士に確認することをおすすめします。
9.養子にも遺留分はある?
養子にも、原則として実子と同様に遺留分が認められます。
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障される、最低限の遺産取得に関する権利です。
例えば、父親が遺言書で、
「全財産を長男に相続させる」
と定めていた場合です。
父親に養子がいる場合、その養子にも遺留分が認められることがあります。
遺留分を侵害された場合には、一定の要件のもとで、遺留分侵害額請求を検討できます。
ただし、遺留分侵害額請求には期間制限があります。
また、相続人の構成や生前贈与などによって具体的な計算が異なります。
遺留分については、第61回のコラムでも詳しく解説しています。
10.養子がいることを知らずに遺産分割協議をしたら?
相続手続を進める際には、戸籍を調査して相続人を確定します。
ところが、亡くなった方が過去に養子縁組をしていたことを、家族が知らなかったというケースもあります。
例えば、父親の相続について、母親と実子2人だけで遺産分割協議を行った場合です。
その後、戸籍を調査したところ、父親には別に養子が1人いることが分かりました。
この場合、養子も相続人である以上、原則として、その養子を除外して行った遺産分割協議では、有効な遺産分割が成立したとはいえません。
そのため、改めて相続人全員で協議する必要が生じることがあります。
相続人を正確に確定する前に、遺産分割協議を進めてしまうことは避けましょう。
11.養子がいる場合、相続登記にはどんな書類が必要?
養子がいる場合でも、相続登記の基本的な手続は通常の相続登記と同じです。
ただし、養子縁組の事実や相続関係を確認できる戸籍関係書類が必要になります。
一般的には、次のような書類を確認します。
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍関係書類
- 相続人の戸籍関係書類
- 養子縁組の事実を確認できる戸籍関係書類
- 遺産分割協議書(協議による場合)
- 相続人の印鑑登録証明書(協議による場合)
- 不動産を取得する相続人の住所を証する書類
- 固定資産評価証明書など、登録免許税の計算に必要な資料
具体的な必要書類は、相続の内容や登記原因によって異なります。
また、法定相続情報一覧図を作成しておくことで、金融機関などでの相続手続に利用できる場合があります。
12.養子がいる相続で、特に注意したいことは?
養子がいる場合の相続では、次の点を確認しましょう。
① 養子縁組が成立しているか
一緒に生活していたというだけでは、法律上の養子とは限りません。
② 普通養子か特別養子か
実親との相続関係が異なるため、縁組の種類を確認します。
③ 養子を含めて相続人を確定する
戸籍を調査し、養子を除外したまま遺産分割協議を進めないようにします。
④ 実子と養子の法定相続分を確認する
原則として、実子と養子の法定相続分は同じです。
⑤ 相続税の計算では別のルールがあることを理解する
相続税の基礎控除額などの計算では、養子の人数に制限が設けられています。
⑥ 遺言書がある場合には、その内容を確認する
養子にも遺留分が認められる場合があるため、遺言書の内容によっては注意が必要です。
まとめ
養子は、法律上の親子関係が成立している以上、原則として実子と同じように相続権を持ちます。
実子と養子の法定相続分にも、原則として違いはありません。
ただし、普通養子縁組と特別養子縁組では、実の親との相続関係が異なります。
また、相続税の計算では、養子の人数について民法とは異なるルールが設けられています。
特に重要なのは、次の点です。
① 養子にも、実子と同じ相続権があること
② 普通養子は、原則として実親と養親の両方を相続できること
③ 特別養子は、原則として実親との法律上の親子関係が終了すること
④ 養子が複数いても、民法上は原則として全員が相続人になること
⑤ 相続税の計算では、法定相続人の数に含める養子の人数に制限があること
大志法務事務所では、相続人の調査、戸籍の収集、法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成、相続登記などに対応しています。
「亡くなった親に養子がいたことが分かった」
「実子と養子がいる場合の相続分を知りたい」
「再婚した親の相続手続を進めたい」
という場合には、お気軽にご相談ください。
相続手続では、家族としての関係だけでなく、戸籍に基づいて法律上の相続人を正確に確認することが大切です。
参考情報
※本記事は2026年10月23日時点の法令等に基づく一般的な解説です。養子縁組の成立、相続人の範囲、相続分、相続税の計算などは、個別の事情によって異なります。相続税については税理士などの専門家にご確認ください。
